コラム

このページは、コラムを紹介するコーナーです。医食同源・薬膳・食養生に結びつく食材のご紹介や漢方の銭湯・足湯など、東洋医学、漢方、健康に結びつくトピックを中心にお届けいたします。

東洋医学コラム

2006年9月〜10月の「院長の独り言」

だって寒いんだもん(2006年9月)

古典落語 志ん生集先日、本を片付けていたら『古典落語 志ん生集』(古今亭志ん生 ちくま文庫)が出てきて、ついつい読み込んでしまいました。

この本は古今亭志ん生の落語をそのまま文章にしたものです。

本当は実際に生で落語を聞くのが一番なのでしょうが、私は落語を本で読むのも好きです。

そういえば、糸井重里さんが何かのインタビューかなんかで一番好きなフレーズは落語に出てくる「だって寒いんだもん」というフレーズだといっていました。 これは、ろくでもない亭主にずっとついているおかみさんに「なんであんなのと一緒にいるの?」と聞いたときの答えがこの「だって寒いんだもん」なんです。

これは志ん生の『風呂敷』という噺のまくらに使われるものなんですが、落語の面白さの一つはこういう一見単純そうな言葉のなかに深みのあるところなんですよね。

人間とぉいうものは(2006年9月)

今回は落語についてです。

落語に出てくる登場人物は弱かったり愚かだったりする人間ばかりが出てきます。 これが歌舞伎や講談なんかと違うところで、歌舞伎や講談だと人間離れしたヒーローや立派な人物が出てきて活躍する話がほとんどです。

それに対して落語ではどこか欠点のある人間が出てきます。そして笑いが起こるわけですが、これなどは落語がもつ人間に対しての独特のまなざしがあるように思います。

人間はだれでも愚かしさや弱さをもっています。落語はその人間の愚かさ弱さ儚さを認め、そしてそれを笑い飛ばしているのではないでしょうか。

これが立川談志師匠にいわせれば「落語は人間の業の肯定である。」ということになるのでしょうし、古今亭志ん生師匠によれば「人間とぉいうものは・・・」ということになるのでしょう。

秋の味覚 梨(2006年9月)

秋ですね。

秋といえばスポーツの秋、読書の秋、そして食欲の秋でもあります。秋には様々な味覚のものがありますが、そんななかで、今回は梨についてです。

今回も中国・明の時代に書かれた本草綱目(ほんぞうこうもく)からみてみましょう。(ちなみに本草綱目では梨の実、花、葉、木の皮。それぞれ項目を分けて書かれており薬としての働きがそれぞれ微妙に異なりますが、ここで述べるのは普段私達が食する実についてです。)

梨は四気五味(しきごみ・東洋的な薬性の分け方)では甘、微酸、寒とあり、多く食べ過ぎると冷やす作用があります。ですから本草綱目では怪我をしているもの、婦人、血虚(けっきょ:血のエネルギー不足)のものは梨を食べ過ぎてはいけないと書かれています。

果物は水菓子(みずかし)ともいわれ、一般にはすべて身体を冷やすものと思われています。 しかし橘などは温の性質があります。ですから果物でも、そのものによって性質が異なるのです。 まあでも、果物全体をみると冷やす性質のものが多いのも確かですが・・・。

梨の効用としては、熱による咳、咽の渇き、火傷のあとに切片にして貼るとか(これなどはアロエと同じ働きです。)、あと中風、大小便の出が悪いとき、酒毒を抜くときなどに使われます。

NHKの『チャングムの誓い』を観ると梨がよく隠し味に使われたりしていますよね。 思うのですが、韓国の料理には唐辛子やニンニクなどを多用し日本に比べて辛いです。漢方では辛いものを多く食すと身体のなかに熱が生じるとされています。だから韓国の人はその熱をとるために長い伝統のなかで自然と梨が料理に使われるようになったのではないでしょうか。

パウル・クレー展を観に行って(2006年10月)

先日、北海道立近代美術館に『パウル・クレー展』を観に行きました。 開催が終わる(10月9日まで開催)ギリギリでようやく観にいけました。

パウル・クレーは1879年にスイスで生まれ、1940年に亡くなった20世紀を代表する画家の一人です。

パウル・クレーはお伽の国に出てくる様な奇妙な生き物のイメージを描いたり、色彩をモザイクのように組み合わせたり、文字や記号のような形を絵の中に配列したりなどいろんな作風の面があります。

またクレーは自然というものに非常に関心があり、自然を描いた絵がいくつかありまが、それは写実的ではなく、その自然の奥にある何かをイメージとした作品になっているように思いました。

そのためでしょうか、クレーの絵は単に美的なものというよりものごとの本質により近づき、それが彼の作品に深みをもたらしているのだと思いました。

おそらく、芸術は目に見えるものを単に再現することではなく、その背後にある何かを見えるようにするものであるのでしょう。パウル・クレー展を観てそんなことを感じました。

寒くなって来ましたね(2006年10月)

10月も後半に入り北海道は大分寒くなってきました。札幌でも平野はまだですが手稲山などでは初冠雪がありました。

私は日々の治療で患者さんの脈を診ていますが、このところ脈が浮いている人が多くなりました。

『傷寒論』という2000年ほど前の東洋医学の本にはカゼを引くと脈が浮くと記載されており、その通りで脈の浮いている人の多くは何らかのカゼの症状があります。

また明らかなカゼ症状が出ていない人でも、よく診てみるとカゼに反応するツボに反応が出ているので軽くカゼを引いている状態なんです。

大いなる自然と人の身体は密接に繋がっていて、それを知っている東洋医学はやっぱり素晴らしいですね。

医術の心(2006年10月)

『チャングムの誓い』も全54話のうちもう51話まで終わってしまいあと僅かになりました。今回の51話のタイトルは「医術の心」でした。

天然痘にあきらめることなく立ち向かうチャングム、そしてとうとう天然痘を治します。そんなチャングムを見て師でもあり医局長のシン・イクピルは王の主治医にチャングムがなることに同意し王に上奏します。その上奏で、シン・イクピルはチャングムは母の心で治療にあたって素晴らしいと言います。

本当に素晴らしいことですよね。

そういえば、東洋医学のバイブル、黄帝内経の霊枢・九鍼十二原篇にも黄帝の言葉に「余子萬民」というのがあります。

そのまま読めば「余(よ)は萬民(ばんみん)を子(こ)とす。」ですが、「余は萬民を愛(いつく)しむ。」と読みます。

「子」を「愛(いつく)しむ」と読ませているところが面白いですよね。

「子」は名詞ですが、古代漢語では名詞を動詞としても使うんですよね。

現代中国語では名詞を動詞として使わないのでそこが古代漢語と現代中国語の大きな違いの一つです。

患者をわが子と思って治療する、それが医術の心ということでしょうね。

※第46話「医局長の遺書」から第54話「我が道」までを収録。

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