「院長の独り言」年度別

「院長の独り言」を時系列でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

「院長の独り言」年度別

2025年7月~12月の「院長の独り言」

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『赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア』(2025年12月)

本書『赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア』(白川美也子著、アスク・ヒューマン・ケア)は、赤ずきんとオオカミをモデルにトラウマについて分かりやすく書かれています。

トラウマを知る入門書として良書の一つだと思います。

本書に書かれていたことを幾つかピックアップしてみると、

トラウマには単回性(災害など単回によるもの)トラウマと、複雑性(慢性的に複数回によるもの)トラウマがある。

単回性トラウマは再体験と過覚醒が多い、複雑性トラウマには麻痺や解離が多い。

トラウマ記憶は解消されないまま冷凍保存されているようなもので、脳の作業テーブルに大きな過去と小さな今があり、日常生活に使えるワーキングメモリが少ない状態、その為日常生活に困難をもたらす。

3つのF、何らかの出来事に遭遇した時には戦う(Fight)、逃げる(Flight)、固まる(Freeze)の3つの行動様式しかない、どれを選ぶかは自由だし、どれにも優劣は無いし、悪くない。

トラウマのケアには、先ず安全安心の確保が一番重要であり、次に感情や五感を徐々に解消し冷凍保存されたトラウマ記憶を過去の出来事へと再編集していく、次に社会と再結合する。

災害の被災者の約75%は徐々に日常生活に適応・回復する、約25%はうつ病、適応障害、物質依存、身体表現性障害などになる、被災者の約10%がPTSDになる。

トラウマの治療法として、認知行動療法、持続エクスポージャー法、EMDR法、STAIR療法など様々な方法の紹介。

自分でできるトラウマ解消法としてリラックス法、ツボ刺激、トラウマの言語化、ヨガ、瞑想などの紹介。

ストレスが様々な病を引き起こすことは良く知られていますが、複雑なもっと根深い心のストレス(PTSDのような)が病気や日常生活を快適に過ごすのを阻害する遠因になっていることもあります。

そのことについて知っていることは大事だと思います。

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『からだは嘘をつかない』(2025年11月)

A・ローエンはアメリカの精神科医で、フロイトの孫弟子になります。

精神分析の立場から心と体の関係性に着目し、バイオエナジェティックス分析というものを立ち上げました。

現代では心と体の関係性に着目した心理療法はたくさん有りますが、その初期のものの一つといえます。

本書『からだは嘘をつかない』(アレクサンダー・ローエン著、国永史子訳、春秋社)では、心と体の関係性についていろいろ書かれていますが、呼吸についての部分を少し紹介したいと思います。

ストレスがかかると人は(ダメージに対して身構えてるので)息を止めます。

そのため継続的にストレスがかかると、呼吸が浅くなる、つまり呼吸障害が起こります。

呼吸障害には2つのタイプがあり重症になると以下の症状がでるとされています。

①吸気障害

横隔膜が動かない、お腹が固くなる、胸はしぼんだ状態で固定される、代謝低下、周りの世界に閉じている、分裂気質タイプ、吸うことへの恐れ、表面からのエネルギーの撤退、心がダメージを受ける、吸気は生に対する積極性を表します、恐怖を解放し積極性を活性化する必要があります。

②呼気障害

胸は動かず横隔膜と腹が動く、胸は息を吸い込んだ状態で止まっている、十分に息を吐き切ることが出来ない、神経症タイプ、吐くことへの恐れ、表面へのエネルギーの過剰、体がダメージを受ける、息を吐くことが出来ないは手放すことが出来ない、胸と横隔膜・腹との一体性・全体性が必要。

呼吸と骨格についても述べていて、例えば吸気で骨盤が後傾、呼気で骨盤が前傾するなど呼吸障害が運動器の障害に繋がることもあるということです。

心理療法と鍼灸ではその基盤となるものが異なりますが、一つの参考になります。

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フロンティアで会いましょう~最新科学が解き明かす東洋医学のパワー(2025年10月)

「フロンティアで会いましょう~最新科学が解き明かす東洋医学のパワー」は10月6日(日)23時からNHK総合で放送されました。

鍼灸や漢方薬の有効性を示す様々なトピックスが紹介されていました。

幾つか列挙すると、

①大建中湯が腸内環境を改善する

②茵蔯蒿湯が黄疸に有効である

③アルテミシア アヌアが癌に有効な可能性がある

④敗血症に足三里の鍼が有効な可能性がある(ラットの実験から)

⑤イギリスでうつ病の治療に鍼が有効であると示された

⑥バトルフィールド アキュパンクチャー(アメリカ軍の耳鍼)が被災地などで活用されている

⑦アフリカで結核やエイズの患者にお灸が活用されている

東洋医学や鍼灸の有用性が紹介されるのは嬉しいことです。

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『カウンセリングの技法』(2025年9月)

本書『カウンセリングの技法』(國分康孝著、誠信書房)は15年ぐらい前に、問診能力の向上の一助になればと、買った本です。

今回改めて読み直してみると、面白く、腑に落ちるところが多々ありました。

幾つか列挙すると、

カウンセリングの3段階

①リレーションを作る

②問題の核心をつかむ

③適切な処置をする

カウンセラーの倫理

①秘密保持

②勉強

カウンセリング理論

①人間をどう捉えるか

②性格はどう形成するか

③問題行動はなぜ、どの様に発生するか

④治るとは何か

⑤その目標達成のためにカウンセラーは何をなすべきか

⑥クライアントは何をするべきか

⑦その方法の長短は何か

著者のカウンセリングの立場

①カウンセリング イズ アート

②折衷主義

折衷主義も大きく分けると3つの立場が有ります。

①核となる理論を持ち、その弱点を補うかたちで他の理論を導入するもの

②既存の諸理論を統合する方法

③それぞれの理論を機に応じて選択して利用する方法

著者は精神分析を核に、ロジャーズや行動療法など様々な理論を取り入れたた折衷派ということです。

本書のあとがきに著者が師の一人である霜田静志から励まされた言葉も心に沁みました。

「若いうちは、好きなことをしてメシが食えるというのはむずかしいよ。ある年齢になって初めて、好きなことが収入につながるようになる。それまでは勉強して実力を養っておくことだ。満を持して放たずというあれだよ、君」

カウンセラーと鍼灸師で異なるところもありますが、共通するところも多々あるように思います。

関連記事

『カウンセリングの理論』(國分康孝著、誠信書房)」(2024年3月)

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“新”東洋医学(2025年8月)

『“新”東洋医学』は2025年8月4日から毎週月曜日午後9:30〜午後10:00にNHK・Eテレで放送されています。

東京女子医科大学附属東洋医学研究所所長の木村 容子先生、料理研究家、国際中医薬膳師のワタナベマキ先生、鍼灸師、中国政府認可世界中医薬学会連合会認定国際中医専門員の石垣 英俊先生が出演されています。

一般の視聴者向けに手軽にできる薬膳、ツボ押しなどが紹介されています。

東洋医学が紹介されるのは嬉しいことです。

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腹診と日本文化(2025年7月)

腹診は中国や韓国ではあまり発達せず、日本において大きく発達しました。

中国や韓国では、身分の高い人の体にむやみに触れてはいけないという儒教の教えがあるからとされています。

日本にも儒教は伝わっていますが、日本において腹診が大きく発達したのは、腹診の有用性と日本文化の特殊性も関係しているように思います。

ハンティントンの『文明の衝突』では、世界の文明を、西欧文明、東方正教会文明、イスラム文明、仏教文明、ヒンドゥー文明、アフリカ文明、ラテンアメリカ文明、中華文明、日本文明に分けており、日本は一国のみで成立する孤立文明とされています。

考えてみると日本は、鍼灸もそうですが、漢字をはじめとして多くのものを中国から学びましたが、そこには取捨選択や日本風のアレンジがあるように思います。

例えば宦官という制度が中国や韓国ではありましたが、日本にはありませんでした、その代わり大奥という制度がありました。

腹にたいしても日本は独特な見方をしているように思います。

例えばことわざで、「腹が立つ」は怒りの感情を、「腹を決める」は心を決めることを、「腹を割る」は、隠さずに本心を話すことを意味します。

つまりココロの働きを腹という場所に置いていたということになります。

中国では心は心の臓であり、ココロの働きでもあります。

英語でもHeartは心臓でもあり、ココロでもあります。

つまり英語でも中国語でもココロの働きの場所は胸になります。

(もちろん科学の発達とともにココロの働きの場は頭に変わりますが・・・)

近年脳腸相関が注目されています。

脳と腸が自律神経やホルモンなどによって、密接に影関係しているというものです。

もしからしたら昔の日本人はそのことに気づいてたのかもしれません。

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