「院長の独り言」年度別

「院長の独り言」を時系列でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

「院長の独り言」年度別

2010年7月〜12月の「院長の独り言」

東洋医学・伝統医学の意味(2010年12月)

本年もあと一ヶ月ほどとなり、無事に本年を終えることが出来そうです。

これもひとえに患者の皆様、友人、知人、家族など太玄堂鍼灸院を支えてくださった皆様方のお蔭だと感謝しております。

東洋医学・伝統医学に意味があるとすれば近・現代医学が見落とした「何か」があるからでしょう。

近・現代医学と東洋医学・伝統医学の一番大きな違いはダイナミックな躍動する生命のちからというものへの眼差しではないでしょうか。それは生命の力(自然治癒力)に対するロマンといってもいいかもしれません。

ヒポクラテスは病気は体の部分にあるのではなく体全体が病気になるとして病気を全体として捉えました。ヒポクラテスはそれを体液病理学説として表現しました。我々鍼灸師は気という概念でこれを捉えます。

現代のような固体病理学では病気は全体ではなく局在にあることになります。つまり病気は部分の問題で体全体つまり自然治癒力は関係ない。

その批判から現代では西洋医学はホリスティック医学を提唱しています。理念としては素晴らしく正しいことだと思います。しかしその視点での具体的かつ有効な手段を現代医学が生み出せているか疑問なところもあります。

我々鍼灸をはじめとした伝統医学・東洋医学はその有効な手段や思想を提供できるものだと思います。

『アーユルヴェーダとマルマ療法』(デイヴィッド・フローリーほか著、上馬場和男・西川真知子訳、産調出版)(2010年11月)

アーユルヴェーダとマルマ療法インド医学にもツボがあり、それをマルマと呼びます。『改訂 アーユルヴェーダとマルマ療法』は、インドのツボであるマルマについて書かれた本です。

インドにはアーユルヴェーダ医学あり、シッダ医学あり、ユーナニー医学あり、またそれらとは別にヨーガの身体観があります。歴史的に交流があり共通する部分もありますが、本来はそれぞれ別のものです。

厳密に言うとマルマはスリランカを含むインド南部のシッダ医学かとは思いますが、インドの伝統医学であるシッダ医学はあまり知られてなく、インド医学としてはアーユルヴェーダの方が有名なので、本書ではそれらを踏まえたうえでインド南部のアーユルヴェーダであるシッダ医学という表現がされています。

それはさておき、中国だけでなくインドにもツボ療法があるということは、私達鍼灸師にとっても興味深いことですし、ツボはある意味普遍的なものだということだと思います。

ちなみにツボとマルマを簡単に比較して見ますと、ツボの数は360(古代中国では一年の数を360日とした為。実際はツボの数はもっとたくさんある。)、マルマの数は107(私は解かりませんが107という数はインド文化において何らかの意味があると思います。マルマの数は実際はもっとある。)、ツボの大きさは点(実際は触診してみるとある一定の広がりがありますが概念としては点)、マルマの大きさは1/2横指〜4横指の面(あまりメジャーではありませんがインドにもスチ・マルマといって鍼療法がありますので鍼治療においては点に施術するのでしょうが概念としては一定の広がりをもった領域・面です。)

私達鍼灸師はツボを点として捉えますが教科書的な基準の位置と臨床上有効なツボの位置が異なることが多々あります。インドのマルマの様に初めからツボを面として捉え、その中から有効なポイントをツボとして捉えるのも面白い見方だと思います。

いずれにしてもツボやそれを用いる鍼灸というものは凄いと改めて思いました。

『医学の歴史』(梶田昭著、講談社学術文庫)(2010年10月)

医学の歴史医学の歴史』は文庫本で手軽ですし、内容も教科書的な羅列ではなく面白く読めて医学の歴史の全体像が解る内容の本です。

自分たちの立ち位置を知るのに歴史というのは重要です。

どのような流れで現在の立場が形成されたのか、またそこから未来に向けてどう在らねばならないかを考える一つの材料になると思うからです。

伝統医学である東洋医学が現代に存在する意義というのも医学の歴史を学ぶと見えてくるかも知れません。

ただ東洋医学を実践している者としては、文庫本でページの制約もあるのでしょうが、中国やインドの医学の歴史の部分がもっとあると良かったです。

また、これは無理な要望かもしれませんが、この本に書かれている事柄は医学の歴史の言わば正史です。

ですが歴史の中で間違いとされて埋もれている学説の中にも面白いものがありその中には一片の真実があると思います。

例えばメスメルの動物磁気やライヒのオルゴン、ドリーシュのエンテレヒー等々、多少オカルト的なものもありますが・・・。

これらの学説はある意味東洋医学・伝統医学と似通った考えをしており、何故近代にこのような考えが起こったのかその背景を考えることは東洋医学・伝統医学を考える意味でも面白いのではないかと思います。

NHK土曜時代劇 若き女医桂ちづるの物語『桂ちづる診察日録』(2010年9月)

今回は、NHK土曜時代劇の紹介です。タイトルは『桂ちづる診察日録』です。9月4日(土曜日)から、NHK総合で毎週土曜日の午後7時半から8時までの30分放送します。

原作は、『藍染袴お匙帖(あいぞめばかま おさじちょう)』(藤原緋沙子著、双葉文庫)、主演は、桂ちづる役で女優の市川由衣さん。

内容は江戸時代、江戸の神田に住む、蘭方医華岡流外科も学び、亡き父に漢方も仕込まれた若き女医桂ちづるの日々の成長を描くというものです。

昨年TBS系列で、日曜日午後9時から『JIN -仁-』が放映されて人気でした。これは現代の外科医が江戸時代にタイムスリップするという話でした。私も面白くて毎週見ていました。

ただ、西洋医学のほうが東洋医学より勝っているというステレオタイプの内容が気になりました。

『JIN -仁-』の場合は仕方ないとしても『桂ちづる診察日録』の主人公も蘭方医で外科手術が得意ということで、東洋医学を行っている鍼灸師としては東洋医学が活躍する内容であってほしいとちょっと思います。

『東洋医学の宇宙』(藤本連風著、緑書房)(2010年8月)

東洋医学の宇宙東洋医学の宇宙―太極陰陽論で知る人体と世界』は今年の3月に出た本で、簡単に内容を紹介しますと、東洋医学の背景にある東洋的なものの見方・考え方の法則を解説しています。

この本の一番のポイントだと思うのは、学者が頭の中だけで考えて生み出したというものではなく、鍼灸師が臨床実践という体験をとおして気づいたものだということです。

東洋医学に関わる鍼灸師や薬剤師、医師はもちろんですが、一般の方で東洋思想に興味のある方も読まれるとよいと思います。

話は変わりますが、藤本先生は最近ブログを始められたようです。タイトルは『鍼狂人の独り言』。

藤本漢祥院のホームページ「鍼灸治療 藤本漢祥院」からみれますので、興味のある方はご覧ください。

藤本蓮風先生のご著書

因幡(いなば)の白兎と「蒲の穂(がまのほ)」(2010年7月)

みなさんは、因幡(いなば)の白兎の伝説を知っていますか?

隠岐の島から因幡の国へ行きたいと考えた白兎はワニザメをだまして向こう岸に渡ろうとします。

もう少しで向こう岸に着こうというとき、ついついだましていたことを言ってしまいます。

怒ったワニザメは、白兎の体中の毛をむしり取り、あっという間に丸裸にしてしまいました。

丸裸にされた白兎がその痛みで砂浜で泣いていると、八上姫という美しい姫をお嫁さんにしようと因幡の国に向かっている大国主命の兄神様が大勢通りかかり『海水で体を洗い、風に当たってよく乾かし、高い山の頂上で寝ていれば治る』と言いました。

白兎が言われたとおりにしてみると、海水が乾くにつれて体の皮が風に吹き裂かれてしまい、ますますひどくなってしまいました。

あまりの痛さに白兎が泣いていると、兄神達の全ての荷物を担がされて大きな袋を背負った大国主命が通りかかり、白兎の話を聞きました。

そして『河口に行って真水で体を洗い、蒲の穂(がまのほ)をつけなさい』と言いました。

白兎がその通りにすると、やがて毛が元通りになりました。

たいそう喜んだ白兎は『八上姫は兄神ではなく、あなたを選ぶでしょう。あのような意地悪な神様は、八上姫をお嫁にもらうことは出来ません』と言い残し、自らが伝令の神となって、兄神達の到着より前に、この事実を八神姫に伝えたのでした。

以上が因幡の白兎の伝説です。

この話の中に出てくる蒲の穂(がまのほ)は実は漢方薬としても使われており、止血作用や打撲外傷にも用いられます。

ちなみに漢方では蒲黄(ほおう)といいます。

神話、伝説ひとつとっても、東洋医学の知恵が生かされているのですね。

ちなみに、お話に出てくる大国主は少彦名と共に日本神話の中では医療の神とされています。

少しでもあやかりたいですね。

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