東洋医学について

「東洋医学について」簡単に総括いたします。病院で行われている一般的な医学(西洋医学)との違いを踏まえた上で、東洋医学のこれからの役割を考えます。

東洋医学について

「東洋医学のついて」の概要

東洋医学とは、日本の近現代以降、病院や医院で行われている一般的な医学(西洋医学)に対して、東洋で発達したとされる医学の総称です。因みに広辞苑をひも解くと、「東洋、特に中国の伝統的医学」と書かれています。このページでは、東洋医学全般を、今後の東洋医学の果たすべき役割とともに、簡単に総括したいと思います。

人間の全体性を見るのが東洋医学

近年「東洋医学」が見直されていますが何故なのでしょうか?そもそも東洋医学とは、いったいどのような医学なのでしょうか?

東洋という言葉は、西洋(ヨーロッパやアメリカなど)に対する東洋(中国やインドなど)というように、地域的な区別として普通使われます。しかし、「東洋医学」という使われかたをした場合、その背後には近代合理科学思想を背景とした医学とそれ以外の伝統医学という意味もあるように思います。

ここでいう伝統医学とは、中国インドアラビアチベットなどの地域に長い間継承されてきた伝統的な医学を指します。

西洋医学が部分のみを見て人間全体を見ていないということへの批判から、ホリスティック医学が西洋医学の中から提唱されました。東洋医学が脚光を浴びたのも、伝統の文化のなかに人間の全体性を観る思想があるからでしょう。事実、近代合理科学思想以前の西洋でも、「最高の医者は哲学者である」(ガレノス)という言葉もあるように、伝統の文化では人間を単なる構造体としてはみないということがうかがえると思います。

東洋的身体観は、西洋的身体観を凌駕する

話は変わりますが、最近、武術家の甲野善紀氏が非常に注目を集めています。甲野さんは「ナンバ走り(日本短距離界のホープ末次慎吾選手などが取り入れている)、ナンバ歩き」のブームの火付け役となったことでも有名ですが、古の武術家の動きを追求していくと、今とは違った身体の動かしかたや身体観があったということに気づいたかたです。甲野さんは、現在、武術家だけでなく、プロスポーツ選手(ジャイアンツの桑田真澄投手が直接指導を受けたことで有名)、音楽家・ダンサーなどの芸術家、介護の現場の人達などにもに注目されています。

甲野善紀氏と田中聡氏の共著『身体から革命を起こす』のなかに「この近代医学的な身体観はごく単純な概念図であって、現実に生きている身体の活動は、その図のなかにおさまってはいない。」(P30)、「近代医学によって概念化された身体は、解剖してみれば、たしかにそのように実在する。だが、「医学的にはありえない」現実が、我々の日常の暮らしである。医師から死期を宣告された患者が、医学的には断固として否定されるべき療法や信仰で、あるいはそうしたことさえなく元気になってしまうことはざらにあるし、それほど大げさなことでなくても、プロ野球の選手がボールをバットで打つことすら、情報の神経伝達の速度を計算すれば、『ありえないこと』である。」(P31)「構造体としての身体の歩行は、文化ではない。一定の合理性が解釈されるだけの身体から文化が生まれることはありえないからだ。生命なきところに文化はない。」(P160)などと書かれています。

これらのことは、「いままでの西洋的な(解剖学的な)身体観では本当の身体を捉えられない」、「西洋医学は確かに目に見える構造によって人体を捉えるということに関しては素晴らしく発展したが、本当の身体を捉えていない」、「東洋医学などの伝統医学のほうが西洋医学で抜け落ちている、より本当の身体を捉えている」ということだと思います。

参考文献

身体から革命を起こす』(甲野 善紀、田中聡共著、新潮文庫)

これからの東洋医学の役割

これらのことから東洋医学がこれからの時代に存在する意義としては、病気の治療はもちろんですが、治療行為の実践を通して今までの身体観(世界観)の転換(パラダイムシフト)を行うということも重要な役割になってくるのではないでしょうか。21世紀はいろんな意味でこれまでのシステムが変化する時代です。

日本の「」や「狂言」などの伝統芸能や「古武術」にきわめて優れた身体的な動きがありますし、インドの伝統的な身体技法であるヨガや、中国の気功など、その中に優れた身体の動きがあることが見直されています。これまで、近代合理主義に甘んじ、見過ごされがちだった東洋、なかでも我々にとって身近な中国や日本の伝統的な医学・文化にこそ、重要な価値判断となり得る英知が存在していたと気づく時代に突入しつつあるのではないでしょうか。

これらのことは、1975年に、フリッチョフ・カプラさんが『タオ自然学』の中ですでに指摘していることですが、21世紀は、東洋医学の思想や技術が果たす役割が、益々重要になることは疑いようがありません。

それでは、この後、「東洋医学」、なかでも中国や日本の伝統医学を中心に、東洋医学の簡単な歴史、さらに中医学の内容について見ていきたいと思います。

参考文献

タオ自然学―現代物理学の先端から「東洋の世紀」がはじまる』(F・カプラ著、吉福伸逸・田中三彦・島田裕巳・中山直子共訳、工作舎)。本書は物理学の最先端(量子物理学)と東洋思想の類似性を説いたものです。

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