「院長の独り言」ジャンル別

「院長の独り言」をジャンル別でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

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「院長の独り言」ジャンル別~2020年~2022年に紹介した書籍

鍼灸・東洋医学・医療関連書籍

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鍼灸・東洋医学・医療関連書籍

『臓腑経絡学』(藤本連風、奥村裕一、油谷直著、アルテミシア)(2020年7月)

西洋医学において基礎となる学問は解剖学と生理学になります。
東洋医学において西洋医学の解剖学、生理学に相当する基礎的な学問が臓腑経絡学になります。

西洋医学の解剖学、生理学と東洋医学の臓腑経絡学は似ているようで大きく違います。
解剖学や生理学は内臓などの部分がどう働いているのか?
つまり部分に注視した学問です。

それに対して、東洋医学の臓腑経絡学は臓腑、経絡の変動によって身体がどのような表現をするのか?(これを蔵象といいます)
言わば臓腑、経絡の変動が身体全体にどのような影響を与えるのか?
つまり身体全体に注視した学問です。

臓腑は心、肺、脾、肝、腎の五臓と胃、胆、小腸、大腸、膀胱、三焦の六腑です。
経絡は正経十二経脈があり、その他に十二経別、十二経筋、十二皮部があり、奇経八脈があり、絡脈として十五絡、浮絡、孫絡があります。
非常に細かく分かれた精緻な体系です。

藤本先生の豊富な臨床経験と学問によって書かれた本書は深く東洋医学を学びたいと思っている鍼灸学校の学生さんにとって、必読の書だと思います。

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『鍼灸学釈難』(李鼎著、浅野周訳、源草社)(2020年6月)

本書『鍼灸学釈難』は今から20年ほど前、私が鍼灸学校を卒業してすぐの頃に買った本です。
本棚から久し振りに出してみました。

著者は上海中医薬大学の鍼灸の教授で、この本は鍼灸の学生向けに書かれた本です。
東洋医学を学ぶうえで鍼灸の学生が疑問に思うようなことに対して解説されています。

例えば、 奇経八脈は八脈交会穴を循行していないのに何故そこが交会穴なのか?
十二経別と十二絡脈はどう違うのか?
足太陰脾経には足太陰の絡が記載されているのに何故脾の大絡があるのか?
是動病、所生病とは何か、これについてどういう解釈があるのか?
どうして同名穴はあるのか、同名穴どうしはどのような関係があるのか?
風池、風府、風門の治療作用はどう違うのか?
など108の問いに答えています。

東洋医学の疑問に答えてくれる鍼灸の学生向けの良書の一つだと思います。
私も買った当初は夢中で読みました、興味のある方にはおすすめの一冊です。

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『井筒俊彦著作集9 東洋哲学』(中央公論社)(2020年3月)

本書は著者の講演や論文などを集めたものです。
著者は哲学者で東洋哲学、言語哲学など幅広く研究された方で、専門はイスラム古典哲学です。

個人的に面白かったのは、「コスモスとアンチコスモス」でした。
コスモスは秩序だったロゴスの世界、アンチコスモスは(著者はアンチコスモスと言葉を変えていますが)カオス、混沌のことです。
一般的に西洋は秩序だったコスモスの世界に対しては真善美を見出し愛し安心する対象で、無意味、非合理なカオス(アンチコスモス)に対しては恐怖や死を意識する嫌悪する対象です。

逆に東洋ではこのカオス、無こそ生命の根源、本当の実在だとする伝統的な文化があります。
老荘思想や仏教思想などでは、目の前にある現実といわれる秩序だった存在、コスモスが本当に確たる存在なのだろうか?
夢や幻のような、あやふやなものではないだろうかという視点を持っています。

ポストモダン、ポスト構造主義という現代哲学も、著者は同じような流れとして見ています。
デリダの解体のように、その存在が本当にそうなのだろうか?と秩序だったコスモスの世界の構造を一度解体して考えてみる。
あるいは固定化されたコスモスの秩序、構造を一度破壊して、新たな構造を組みなおしてみることも大事なのではないか。
閉塞した現代において、それを打開する方法の一つとしてデリダのようなポスト構造主義が存在する。
それは東洋思想というものが現代に存在する意義を持っているということでもあります。

個人的にはその他に、「理事無礙」から「事事無礙」という仏教の華厳哲学の表現を用いて、イスラム哲学のイブヌ・ル・アラビーの哲学を「理理無礙」から「事事無礙」に行く思想だと解説した部分なども面白かったです。

いづれにしても、東洋的なものの見方・考え方が、閉塞した現代を乗り越える為のツールとなりえる、そう改めて感じさせてくれた一冊でした。

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