「院長の独り言」特別編
中国の古典を学ぶ
今回は私たち鍼灸師の日々の勉強の一端をご紹介したいと思います。
私たち鍼灸師は鍼灸に関するあらゆることを学ばなくてはなりませんが、そのなかの一つとして鍼灸の古典を読むというのがあります。
古典を読む上での難点は鍼灸の古典というのは中国の古代に書かれたものが中心となることです。
そのため漢文の素養がどうしても必要になります。(中学や高校で習うあれですね。)
明治初期までは論語を素読するということが学問のベースとして普通でしたので昔の人は現代人よりは古典に接しやすかったみたいです。
中国の古典を読むのに現代中国語を習うとよいと思われる方もありますが、古代中国語と現代中国語はちょっと異なります。(現代日本語と古代の日本語である古語が異なるのと同じですね。)
ですから中国では中医学を学ぶ学校のカリキュラムに医古文というのがあり古典を読む基礎を学びます。
中国の古典を読むのには何が必要なのでしょうか。
中国における伝統的な言語学は大きく文字学・音韻学・訓詁学の3つの要素に分かれます。
文字学ですが、これは一つ一つの文字(漢字)がどのように作られどのように変化していったかということを研究するもので字形と字義との関係も含まれ漢語研究の基礎です。
日本では白川静先生がこの分野で有名ですね。
音韻学は漢語の発声・発音を研究する学問の分野です。
こう書くと簡単そうですが、例えば日本の漢字の読み方でも訓読みと音読みがあり訓読みが日本的な読み方で音読みが中国の読み方となっています。 でも音読み自体にも呉音と漢音というのがあります。
漢音は遣隋使・遣唐使がその当時の中国の都から持ち帰った読み方、呉音はそれ以前に朝鮮半島を経由して日本に伝わった読み方です。
「会」という漢字がありますが会釈(えしゃく・呉音)会合(かいごう・漢音)と同じ「会」という漢字の音読みでも異なります。
中国は広いので同じ漢字でも地域によって読み方が異なるためこのようになったのです。
訓詁学は語義の研究となります。
文字学はひとつの漢字ですが、訓詁学はことばが対象になります。
簡単にいうと漢字が組み合わさった単語(ことば)ですね。
時代や地域、また使われる場面によって同じことばでも意味が異なります。簡単にいうと訓詁学はことばを解釈し意味が通じるようにすることです。
これらのことをきちんと学ぶということが鍼灸に限らず中国の古典を深く読むうえでは必要なこととなります。