「院長の独り言」年度別

「院長の独り言」を時系列でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

「院長の独り言」年度別

2011年7月〜12月の「院長の独り言」

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『古事記の暗号―神話が語る科学の夜明け』と漢字(2011年12月)

古事記の暗号』(藤村由加、新潮社)は古事記を易の思想と漢字で読み解こうというものです。

大国主神は大地・坤為地であるというところから始まって、いなばのしろうさぎの話、根の堅州国の話、少名毘古那神との国作りの話、天津神への国譲りの話などを読み解いていきます。

単純に神話・お話しとしても古事記は面白いですが、いろいろな解釈があっていいと思いますし、面白い視点だと思いました。

鍼灸も含め東洋の学問を修めるには易の思想や漢字についての知識が必要です。

本書では、漢字についは主に音韻学の藤堂明保先生によっています。

藤堂先生は全く違う漢字でも同じまたは似ている音で読まれる漢字は共通の意味を持っているという単語家族という考えを出されました。

例えば「包」は「お腹に赤ちゃんのいる様子」、「宝」は「財貨を大切に家の中にしまっている様子」、「保」は「赤ちゃんを抱いている様子」という意味です。

それぞれ別の漢字ですが、ホウ・ホと同じ音で「丸く包む」という共通の意味があり、音そのものの中に意味があるという考えです。

話は飛びますが漢字といえば他に白川静先生という方がおられます。

白川先生は甲骨文字や金文といった漢字の字形の成り立ちから研究された方で、『字統』、『字訓』、『字通』などがあります。

漢字を学ぶなかで『説文解字』という有名な中国最古の字書があります。

540部に分けられていて、天を表す「一」が最初で、中間に「人」、末部に地を表す「二」が配置されているそうです。

そして540という数字は陰の数の代表の6と陽の数の代表の9を掛けた数を10倍したものだそうです。

天地人と陰陽つまり宇宙がこの中に表されているということです。

漢字一つとっても奥が深いですね。

甘酒(2011年11月)

甘酒には2つ種類があります。一つは酒粕に砂糖を加えて作ったもの、もう一つは麹から作ったものです。

最近、我が家では麹から作った甘酒がブームです。

現代では甘酒は冬の飲み物ですが、江戸時代には夏バテ防止のために夏に飲まれていたそうで、それだけ体に良いということです。

甘酒には、体のエネルギー源となるブドウ糖を始め、必須アミノ酸やパントテン酸、ビタミンB1、B2、B6、ビオチミンなど必須ビタミン類が多く含まれており、米糀(こうじ)に由来する食物繊維やオリゴ糖も豊富です。

日本醸造学界では麹菌を国菌と定めているそうです。

古来から日本では麹を日本酒、味噌、食酢、漬物、醤油、焼酎など様々に利用してきました。

そしてそれらは単に美味しいだけではなく麹の酵素やそれからつくられる様々な物質が私たちの健康を作ってくれる食品でもあります。

まさに、日本のソウルフードではないでしょうか。

秋の刈り取り前の田んぼの稲穂に大豆大の稲麹がつくことがあります。

昔はこの稲麹を豊作のしるしとしてありがたいものとされ、明治時代の頃までは麹屋さんはこの稲麹を麹の種としていたそうです。

現在は稲麹はモミを黒くさせるとして嫌われ、病気とされ、農薬が使われるようになりました。

昔は麹屋さんはその地域の種麹を使い、その土地で採れた米や麦で麹を作っていたそうです。

鍼灸もそうですが、伝統の文化や技術というものは一度失われると復活するのは大変です。

私たちの大切なたくさんの日本の伝統の文化や技術を守り、次の世代に伝えることはとても大切なことではないでしょうか。

甘酒をご自宅で作ってみては・・・

麹から作る甘酒ですが、結構気軽に作れます。

市販の本にも作り方が載っているので、参考にしてみてはいかがでしょうか。

我が家の甘酒の作り方に興味のある方には、太玄堂鍼灸院ご来院の際、こっそりお教えします(^^)

塩麹と甘酒のおいしいレシピ―料理・スウィーツ・保存食 麹のある暮らし 夏でもおいしい麹甘酒で健康になる (ホーム・メディカ・ブックス・ビジュアル版)
甘酒関連情報

「林修の今でしょ!講座 春の豪華3時間SP」の『話題の甘酒のスゴい力を学ぼう講座』の中で、甘酒について紹介されました。

講座内では、「酒粕(さけかす)」から作るものと、「米麹(こめこうじ)」から作るものの2種類の甘酒が紹介されました。

(2016年3月20日更新)

『梅棹忠夫 語る』(小山修三著、日経プレミアシリーズ)(2011年10月)

本書梅棹忠夫 語る』を読んで、梅棹先生は20世紀の知の巨人だと改めて思いました。

いちばん心に残ったのは、「自分の目で見て、自分の頭で考える、これが大事や。」というフレーズです。

もちろん梅棹先生は文献などは事前に読み込んでおられるのでしょうが、自分の目で見て、自分の頭で考えるからこそ自由な着想が生まれ、これまでのパラダイムを変えるような胸がわくわくする発見が出来るのではないかと思いました。

小山先生は私の師匠藤本蓮風先生の飲み友達でもあり鍼の患者さんでもあります。

国立民族学博物館の名誉教授という偉い先生なのですが、普段は冗談ばかりいう面白い先生です。

私が藤本先生の内弟子のとき治療の待ち時間に一度アボリジニについてお話ししてくださった思い出があります。

お茶の話(2011年9月)

最近のマイブームは紅茶・日本茶・中国茶などのジャンルにこだわらずお茶にはまっています。

お茶の歴史は古く、8世紀には中国の陸羽により『茶経』が書かれており、日本に於いても12世紀に栄西によって『喫茶養生記』が書かれています。

いずれにしてもお茶の最初は薬だったのがやがて嗜好品としての飲み物として一般に広まっていったようです。

お茶の始まりは中国のようで緑茶やウーロン茶だけでなく紅茶も中国で生まれたようです。

中国の紅茶の正山小種(ラプサン・スーチョン)と祁門(キームン)を飲んでみました。

正山小種(ラプサン・スーチョン)はその香りが強烈で最初はとても飲めないと思いましたが何回か飲んでいると慣れたのか意外とその香りにはまる感じでした。

祁門(キームン)はすっきりした感じでとても飲みやすかったでした。

ちなみに茶葉の東洋医学的な効能は

  1. キョ風・清爽頭目
  2. 清熱降火・解暑
  3. 解熱毒・止痢
  4. 利水

で、簡単にいうと体のいらない熱を取り、頭と目をすっきりさす働きがあります。

熱中症予防に牛乳(2011年8月)

2011年07月13日放送の“ためしてガッテン”『血液からツヨくなる!熱中症で死ぬもんかSP』で熱中症予防に牛乳が良いというのをやっていました。

内容を簡単にまとめますと、

熱中症予防には、汗をかきやすく、体温が上がりにくい暑さに強い体を作ることが大切です。

その為に運動が大切なのですが、ちょっと汗ばむ程度のを30分以上した後、30分以内に牛乳を300ml飲むことを4〜5日間続けると良いといいます。

どうしてかというと、運動後に牛乳に含まれるたんぱく質をとるとアルブミンが合成されます。アルブミンには水分を保持する働きがあるため、血液中にアルブミンが増えると、水分が引き込まれ、血液量が増えます。血液は、汗の材料でもあるため、血液量が増えると、汗をかきやすくなったり、皮膚血流の増加による熱放散をしやすくなったりして、体温が上がりにくい体になるというものです。

番組を観てとても面白かったですし、改めて納得した部分もありました。

というのも以前「独り言」で書きましたが、東洋医学での牛乳の効用の主なものは『本草綱目』によると、

  1. 体が弱り・やせ細ったのを補う働き。
  2. 体の熱毒や咽の渇きを除く働き。
  3. 皮膚や大腸を潤す働き。

以上の3つです。

体の熱毒や咽の渇きを除く働きは簡単に言うと体を冷やすということですし、皮膚や大腸を潤す働きは汗をかきやすくするということですし、体が弱り・やせ細ったのを補う働きは血流量が増えれば当然そういう働きがあることになります。

東洋医学的にみても熱中症予防に効果があるのが分ります。

余談ですが東洋医学の診断法に舌診というのがありますが、熱中症だと舌の色が赤黒くて、でこぼこしてきます。 参考にしてみてください。

『病が語る日本史』(酒井シズ著、講談社学術文庫)(2011年7月)

本書病が語る日本史』は、縄文時代から現代にいたるまで迷信の類からポンぺやシーボルトなどの史実に関することまで幅広く病を通して日本の文化史が語られた本です。

著者の酒井シヅさんは順天堂大学名誉教授の医史学者で、TBS系で日曜劇場として放送されたドラマ「JIN-仁-」の医療指導・監修もされています。

ちなみに本書には「茅輪くぐり」の話も載っています。

北の海に住む武塔神が、あるとき南の海に住む女神を訪ねた。

疫隈まで来たところで日が暮れた。

そこには蘇民将来と巨旦将来の兄弟が住んでいた。

武塔神はまず金持ちの巨旦を訪ねて宿を頼むと、身も知らぬあやしげな者を不審に思った巨旦は断った。

つぎに貧乏だが、こころ優しい蘇民を訪ねた。

蘇民は粟がらの座と粟飯しか出せないがといって、快く泊めてくれた。

それから数年たったある年、武塔神は同じ村を神々を従えてやってきた。

蘇民の家を訪ねて、茅でつくった茅の輪を贈って、蘇民将来の子孫はすべてこれを腰につけておくようにといって立ち去った。

その後で疫病が流行したとき、茅をつけた蘇民将来の子孫以外の者はみな死んだ。

これが蘇民将来の伝説で、いまでも神社によって6月の晦日に「夏越しの祓」といって境内に大きな茅の輪が作られ、茅の輪くぐりが行われます。

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