「院長の独り言」年度別

「院長の独り言」を時系列でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

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2013年1月~6月の「院長の独り言」

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梅(2013年6月)

先日、札幌の平岡公園に梅を見に行きました。

平岡公園の名物の梅ソフトを食べましたが美味しかったです。

ちなみに漢方薬でも梅を使います。

烏梅(ウバイ)と言い、未成熟の梅の実を燻蒸したもの生薬として使います。

・烏梅の性味は酸、渋、平。

・帰経は肝、脾、肺、大腸。

・効能は慢性の咳、慢性の下痢、回虫による腹痛、下血、血尿、性器出血、のどの渇きなどに効きます。

烏梅は漢方薬ですがわれわれ日本人は梅を梅干しという食品として摂っています。

梅干にも次のような効能があると言われています。

・唾液の分泌を促して消化吸収を良くする効果

・疲労回復の効果

・血糖値の上昇を抑える効果

・便秘の解消を助ける効果

・肝機能を高めることによって酔いを防止する効果

・解熱効果

・抗菌・防腐効果

観ても美しい梅ですが、食べても美味しく、しかも体にも良いとは、梅は素晴らしいですね。

「アイスマン ~5000年前の男は語る~」(2013年5月)

2013年4月13日(土) 夜11時(再放送2013年4月20日(土)午前0時45分)放送されたNHK「ETV特集 アイスマン ~5000年前の男は語る」を観られたでしょうか?

内容は1991年にアルプスの氷河から発見された世界最古の冷凍ミイラであるアイスマン。このアイスマンを完全解凍して最新の医療技術を駆使して体内からサンプルを採取・分析するという画期的な調査についてでした。

胃の内容物から5千年前のアイスマンが小麦粉を練って焼いたパンらしきものを食べたり、ハーブなども食事に使用した意外と豊かな食生活を送っていたということや、傷痕などからアイスマンが実は何者かによって殺されたということまで分かりました。

個人的に面白かったのは、アイスマンの体にいくつかある刺青の痕でした。

通常の刺青と違い服に隠れる外から見えない位置にありました。

この刺青の位置が実は腰痛に使われるツボの位置に彫られており、事実レントゲンでこのアイスマンが腰椎すべり症であることが判明しました。

5千年前はまだ中国文明が発生する前であり、しかも中国から遥か遠くに離れたヨーロッパのアルプスに鍼治療があったということは驚くべき事実です。

薬草治療は古代から普遍的に世界中にあったのに何故鍼治療は中国だけなのか?と思っていましたが、もしかしたら鍼治療も古代において普遍的に世界中にあった治療法だったかも知れませんね。

「NHKスペシャル 完全解凍!アイスマン ~5000年前の男は語る~」からの引用抜粋

“アイスマン”は1991年にイタリア・オーストリア国境付近にあるアルプスの氷河から発見された世界最古の冷凍ミイラである。

・・・・・・

世界最古の冷凍ミイラ“アイスマン”が初めて完全解凍され、徹底的に調べられることになった。有史以前の暮らしを知る鍵が詰まった超一級の文化遺産は、私たちに何を語りかけるのか・・・?

・・・・・・

“アイスマン”の解凍・調査に密着し、分析から得られた最新の知見を紹介。壮大な歴史ロマンの世界へいざなう。

・・・・・・

※なお、番組の詳細は、「NHKスペシャル 完全解凍!アイスマン ~5000年前の男は語る~」もしくは「ETV特集 アイスマン ~5000年前の男は語る~」をご覧ください。

『5行循環 藤田六朗論考集第4集』(藤田六郎、医道の日本社)(2013年4月)

先日古書店で、『5行循環 藤田六朗論考集第4集』を見つけ早速買って読んでみました。

陰陽五行はともすれば非科学的、迷信と思われている中、様々に論を張って陰陽、五行、十干十二支の真実性が述べられていました。

例えば、五行と元素の関係や五行と五星の関係や暦との関係などチャレンジングな論もあり興味深かったです。

個人的には牽強附会の感じを多少受けましたが・・・。

ただこの時代に陰陽・五行の見方の枠を広げるチャレンジングな試みがなされたというだけで意味があると思います。

「陰陽と五行は同一現象の見方の差に外ならない」と本書に書かれてました。

同感で陰陽五行も含めすべての理論は物事を認識・理解するための道具にすぎないのであって、有用であるか?使いやすいか?自分の好みか?など様々な要因によって各個人が道具を選択して用いているだけです。

道具であれば自分の使いやすいように改良するのも理にかなったことのように思います。

春の生活の仕方(2013年3月)

3月に入り春の季節になりました。

春は「草かんむり」+「日」+「音符・屯」の会意兼形声文字で「地中に陽気がこもり、草木がはえ出る季節」を示します。 

二十四節気では立春から立夏の前日までですが、一般的には3月~5月が春の季節とされています。(旧暦では1月~3月になります)

まぁ、北海道は本州とは違いまだまだ寒い日が続きますが・・・

東洋医学では春は肝の臓が変動する季節とされています。

肝の臓が変動するとイライラ、頭に気が上る、胸脇部の張りなどの症状が出ます。

『黄帝内経素問』の「四気調神大論」には季節に応じた生活の仕方が書かれており、春は庭に出てゆったりと歩き、髪をほどいて体をゆったりとさせるのがよいと書かれています。簡単に言うとリラックスですね。

肝の臓の病変は簡単に言うと過緊張、自律神経の交感神経優位の状態なので、もともとその傾向の人は春は特に気をつけた方がよい季節です。

『漢方一貫堂の世界』(松本 克彦著、自然社)(2013年2月)

漢方一貫堂は幕末に生れ明治大正昭和と活躍された森道伯先生が創始した日本漢方の流派です。

日本漢方は大きく分けると古方派と後世派とに分かれますが一貫堂は後世派の流れを汲みます。

一貫堂医学では基本的に3つの証に分けそれぞれに応じた処方をします。

森道伯の弟子として矢数格、矢数道明、石野信安などがいます。

鍼灸との関わりでいえば、経絡治療という流派を打ち立てた岡部素道、井上恵理、竹山晋一郎の三人のうち竹山晋一郎は森道伯に治療を受けたことがきっかけで東洋医学に目覚めました。

また漢方治療家である森道伯自身も実は鍼を使っており往診に行くときは必ず鍼を持って行ったとのことですが、残念ながら森道伯の鍼の技術は伝わっていません。

本書『漢方一貫堂の世界―日本後世派の潮流』は矢数格先生の弟子の中島紀一先生のもとで学んだ著者が昭和58年に書いたもので、著者は中医学も学んでいるので後世派の漢方の使い方がとても分かりやすく書かれています。

個人的に興味深かったのは、中島紀一が「基本方はワードでこれを組み合わせてセンテンスにもって行くのだ」と述べているところで、一味一味を大切にする中国や厳密な成方の規定を守る日本古方派と大きく異なる一貫堂独自の合方の仕方です。

また、森道伯は、「池の面に月は夜な夜な通えども姿とどめず影も残さず」という歌を愛したとのことですが、まさに「気」の世界を表した歌だと思いました。

参考文献

矢数 格 (1964) 『漢方一貫堂医学』 医道の日本社

2013年新年のご挨拶 ~指頭感覚~(2013年年始)

あけましておめでとうございます。

本年も無事にお正月を迎えることができました。

これもひとえに私を支えてくださる家族、友人そして患者の皆様のお蔭だと思っております。

少しでも皆様方にお返しができるよう本年も精進したいと思っています。

手指で体表を探る指頭感覚は日本鍼灸の大きな特徴であり素晴らしい技法であります。

本年は指頭感覚のより一層のレベルアップを目指したいと思います。

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