「院長の独り言」年度別

「院長の独り言」を時系列でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

「院長の独り言」年度別

2019年7月~12月の「院長の独り言」

『東西生薬考』(大塚恭男著、創元社)(2019年8月)

本書「東西生薬考」は、東洋と西洋の生薬を比較したものです。
東洋では『神農本草経』から西洋では『ギリシャ本草』から本格的な生薬についての研究がはじまります。

本書を見て面白かったのは、同じ生薬に対しては洋の東西を問わず同じような薬効を認めていたということです。
特に萬菫不殺、トリカブトの毒とサソリの毒を合わせると毒性が弱まることを2000年程前に中国とローマで知っていたということは驚きでした。
中国とヨーロッパでその当時から東西交流があり伝わっていったのか、それとも中国とヨーロッパで別々にその薬効を見つけたのか、分かりませんが、いづれにしても凄いことだと思います。

近代合理主義以前はヨーロッパもギリシャ医学と呼ばれる伝統医学でした。
ギリシャ医学は現代には伝わらず滅びたわけですが、文献である程度知ることができます。
ギリシャ医学だけに限りませんが様々な伝統医学同士を比較研究することは重要だと思います。
それにより東洋医学の本質への理解が深まり、未来に向けての在り方のヒントも得られると思うからです。

ちなみに、著者は漢方の医師として活躍されましたが、そのお父さんは大塚敬節先生といって漢方医学復興に尽力した非常に有名な漢方医です。

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呼吸について(2019年7月)

3の法則というのがあります。
人間は一般的に空気がない状態で3分、非常に厳しい天気環境で避難所なしで3時間、水なしで3日、食料なしで3週間生きられるというものです。
逆に言うと空気がないとか、ちゃんと呼吸できないと体にとってそれだけ大きなダメージがあるということになります。

東洋医学的にも呼吸は大事で、肺の臓の働きで呼吸が行われるのですが、それにより(肺の宣発粛降作用により)気を全身に巡らす働きをしています。

高齢者の健康維持のために、スクワットなどの運動が推奨されていますが、これはサルコペニア(筋力低下による運動器疾患)予防のためですが、呼吸も呼吸筋によって行われているので呼吸筋のトレーニングも大事であります。
一般的には、詩吟や歌を歌ったり、スポーツ吹き矢などが推奨されています。

呼吸法(静座)も有用です、日本でも岡田式静座法や藤田式静座法などの丹田呼吸法がありますし、中国の気功では、六字訣という呼吸法の気功があります。
これは、呼、吹、呵、呬(口偏に四)、嘘、嘻(口偏に喜)の六字を発声するもので、ちなみに肝は嘘、心は呵、肺は呬(口偏に四)、脾は呼、腎は吹、三焦は嘻(口偏に喜)の字が当てられています。

呼吸法の歴史を遡ると、荘子の外篇のなかの刻意篇に、吐故納新、吹呴(口偏に句)呼吸という文字が出てきます。
ちなみに刻意篇の論旨は世を悲観してばかりの山谷の士、道徳や教育を重んじる儒学者、政治を至上とする朝廷の士、世捨て人、健康法ばかりに重きをなす養生家を否定し、恬淡寂寞とした執着しない心を持てば自然と道は開けるというものですが、いずれにしてもこの頃には健康法として呼吸法を行っていた人がいたということです。

吐故納新は故(古いもの)を吐いて新しいものを納(入れる)というもので、呼吸を意味します。
吹呴(口偏に句)呼吸も吹は息を吹く、呴(口偏に句)も体を折り曲げて息を出すという意味で、吹も呴(口偏に句)も呼も息を出すことで吸は息を吸うことを意味しています。

面白い仮説の一つに吹呴(口偏に句)呼吸が六字訣の源流であるというのがあります。
呴(口偏に句)は現代では嘘の字を当てているので、六字訣の中の吹、嘘、呼があり、吹呴(口偏に句)呼吸は吹、嘘、呼の発音をしながら息を吐き、吸で息を吸うというものです。

実際には、この当時行われた吐故納新や吹呴(口偏に句)呼吸がどんなものだったのかは分かりませんが、個人的にはとてもシンプルなものだったのではないかと思っています。

ちなみに私は個人的にアレンジして、口からハァ~と息を10秒以上を目標に吐き切り、鼻から息を吸ってまた口からハァ~と息を10秒以上を目標に吐き切る呼吸法と口をすぼめてフ~と息を10秒以上を目標に吐き切り、鼻から息を吸ってまた口をすぼめてフ~と息を10秒以上を目標に吐き切る呼吸法を気が向いたときに30回ずつ行っています。

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