「院長の独り言」年度別

「院長の独り言」を時系列でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

「院長の独り言」年度別

2023年1月~6月の「院長の独り言」

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鍼の響き(2023年6月)

「鍼の響き」とは鍼治療によって、重だるい感じ、締め付ける感じ、温かい感じ、冷える感じなど患者さんが感じるものです。

中国では「得気」といいます。

得気(鍼の響き)が無いと効果がないという流派もありますが、必ずしも必要というわけではなく、得気(鍼の響き)が無くても十分効果はあります。

また鍼の響き(得気)が好きという患者さんもいますが、鍼の響き(得気)が苦手な患者様も多くおられます。

鍼の響き(得気)とは関係なく、古典には「気至」という言葉が有ります。

「その気至ること、釣針へ魚のかかるが如く、意をもってこれをうかがうべし」

柳谷素霊はその鍼灸師の手指を通して触知する感覚を鍼妙と表現しました。

藤本先生はオ血はスカスカした軽石、湿痰は粘っこい、気滞はすぐ締め付ける感じと邪実によって嗅ぎ分けていました。

私は邪気をチカッとした熱感として感じることが多いです。

いづれにしても、鍼の響き(得気)はそれほど気にする必要は無いと思いますが、気至(鍼妙)は非常に大事であると思います。

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易の話のつづき(2023年5月)

前回の易の説明で足りないところがあったみたいなので、今回は前回の補足をさせていただきます。

艮(山)の卦のコアイメージは「覆いかぶさるようにして動かないように押し止める」と前回説明しましたが、艮の卦の「止まる」は分かるが「覆いかぶさる」はどういうことか、とのことですが、例えば山水蒙という卦がありますが、外卦が艮(山)、内卦が坎(水)となります。

コアイメージでは坎(水)は「解決しなければならない問題、困難」となります。

山水蒙をコアイメージで解くと、内に問題があるが、外の艮が覆いかぶさっている。つまり内なる問題が外からフタをされて見えなくなっている、と解釈できます。

蒙は童蒙という言葉もありますが、世間知らず、若気の至りというのに近い、自分の欠点が分からず失敗を犯す可能性がある、ということです。

なので蒙を啓く、啓蒙が大切となります。

あと、梅花心易についてですが、前回述べませんでした。

前回は卦名や卦辞(おみくじを引いたときに書いてある説明文のようなもの)を中心に判断する周易、四柱推命のように得られた卦から自動的に干支を配して五行的(相生や相克)に占う断易(五行易)を述べました。

周易は卦名や卦辞・爻辞で判断するのですが、判断しづらいケースが多い、その為漢の時代に象数という概念で易学上の発展がありました。

象とは現実世界のもの、数とは概念化された本質、ここでは八卦のこと、つまり現実世界のもの一つ一つを全て八卦に分類していくというものです。

それによってそれまでよりも占いの判断がしやすくなりましたが、それでも吉凶の判断が難しい場合もあります。

そのような中で断易(五行易)は明確に吉凶が判断できる利点がありますが、手順に従って干支を配したり六親を配したりと手順が煩雑な面や卦象や卦辞など周易を全く無視している面もあります。

そして梅花心易ですが、梅花心易は立卦(得卦)の方法がこれまでと全く異なります。

周易も断易(五行易)も筮竹やコイン(又はサイコロ)によって、卦を得ます。

梅花心易は現実の現象から卦を立てます。

例えば若い男(艮三)が南(離火)から来た場合に、山火賁という卦を得るというものです。

これは易学上からは大きな転換で、数(ある意味神意)から象(現実世界)を理解するという流れから、象(現実世界)から数(ある意味神意)を理解する流れができたということです。

占卦(得た卦の解釈)としては得た卦を体と用に分け、変卦や互卦も参考に五行的(相生や相克)に体が強まれば吉、体が弱まれば凶とします。

また、卦辞や爻辞も参考にします。

よって占卦(得た卦の解釈)としては周易と断易(五行易)の合わさったものといえます。

ただ、梅花心易は略筮法と同じ一爻変となりますが、本筮法や中筮法では変爻が六爻全てになったり、変爻が無い場合もあります。

易学上としてはこちらの方が本来の易の姿ではないかという問題もあります。

以上、前回の補足をさせていただきました。

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山沢損と風雷益(2023年4月)

今回は易についてです。
易は元々占いとして始まりました。
その後、陰陽という宇宙の法則を表しているとされ、人がどう生きるにかという哲学・思想としても発展します。
東洋医学では易の法則から医学の法則を見つけ出そうという医易学という学問もあります。

易の構成としては、太極から陰陽が生まれ、その陰陽がそれぞれ陰陽に分かれて四象が生まれ、四象がそれぞれ陰陽に分かれて八卦が生じます。
その八卦どうしの組み合わせ、64卦で宇宙全ての陰陽法則が表せるとしています。

占いとしては、卦を出して、卦名や卦辞(おみくじを引いたときに書いてある説明文のようなもの)が64卦それぞれに書かれているのを参考にして占います。
実際に占ってみますと卦辞などが難しく占いを判断しづらいという面があります。
生年月日時間から自動的に干支を配して占う四柱推命という占いがありますが、得られた卦から自動的に干支を配して占う断易(五行易ともいう)があります、これは占いの判断がしやすいという利点があります。
しかしながら四柱推命のように占うので本来の易の陰陽の法則をきちんと表しているのかという面があります。

ここでは試論として、易の64卦は8卦同士の組み合わせとして捉え、8卦それぞれにコアイメージを当てはめ、そのコアイメージから64卦(ここでは山沢損と風雷益)を読み解いてみたいと思います。

山沢損

易書などを読むと山沢損は地天泰の下の一陽を上に与えたもの、自分を減らして他人に与える、「損して得取れ」などと書かれています。
これをコアイメージで読み解いてみると、山(艮)の卦のコアイメージは「覆いかぶさるようにして動かないように押し止める」。
沢(兌)の卦は元々は砂漠のオアシス、湧き水の出る沢で人々が集まり生活を豊かにする、喜びですが、易では享楽という悪い意味合いでも使われます。コアイメージは「喜び、享楽、欲望」。
山沢損をコアイメージで読み解くと「内なる喜び・欲望を外に出ないように抑える」つまり禁欲というようなイメージになります。
ことわざの「損して得取れ」も間違いではありませんが、「若い時の苦労は買ってもせよ」のほうがコアイメージ的には近い感じがします。
一時的に我慢をしよう。そしてその間に自分の力を増強しようというものです。
それゆえ、卦名は損というどちらかというと悪い名なのに、易書などでは吉の卦として書かれています。
易はタイムスパンが長いので最終的に得をするにはどうすれば良いのかという視点で書かれています。

風雷益

易書などを読むと風雷益は天地否の上の一陽が下に入ったもの、上のものが民に施しをしたもの、などと書かれています。
これをコアイメージで読み解いてみると、風(巽)の卦のコアイメージは「一定の力で押し続ける、隙間があればそこに入り込んで押し続ける」。
雷(震)の卦のコアイメージは「今まで動いていなかったものが動き始める、ビーンビーンとした振動」。
風雷益の卦をコアイメージで読み解いてみると、「動き始めたものが背中を押されている」追い風に乗っているというようなイメージになります。
易書で大吉と書かれているのもうなずけます。

今回はコアイメージで山沢損と風雷益の卦を読み解いてみました。
あくまで試論ですが、易の理解の一助になればと思います。

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『増補改訂版 心の傷を癒すということ』(安 克昌著、作品社)(2023年3月)

本書『増補改訂版 心の傷を癒すということ――大災害精神医療の臨床報告』は阪神淡路大震災を通して心の傷を癒そうと取り組んだ精神科医の安 克昌さんの記録で、テレビドラマにもなり、非常に心打つ内容でした。

本書には個人的に参考になることがいくつか載ってましたので、紹介したいと思います。

PTSDの症状
①覚醒亢進(交感神経の活動が亢進)
②再体験(フラッシュバックなど)や悪夢
③回避(PTSDを起こした状況と似た状況を避けることで社会が狭くなる)と麻痺(心を凍らせて感情が麻痺した状態)

PTSDの治療
①安全であるという感覚を取り戻す
②その恐ろしい体験と折り合いをつける(世界はそのような恐ろしいものではない、たまたま起こった)
③生理的ストレス反応を統制する
④安定した社会的つながりと対人関係における効力を再確認する

J・T・マルツバーガー
□自殺につながる耐えがたい感情
①深い孤独感
②無価値感
③殺害に至るほどの怒り
□緩和するための道
①他者との関係
②仕事との関係
③自己の部分との関係

ラファエル
「子供は起こった出来事を自分が愛されていないとか、攻撃的なことの結果として、あるいは自分が拒絶されていることの表れとして受け取る危険がある。だから持続的な愛情と配慮で子供を安心させて元気づけてやることが肝要なのである」

外傷性記憶
①断片的
②非言語的
③悲しみや怒りなど感情を伴う(悲しみは胸、怒りは腹と結びつくことが多い)
④否定的な感情が結びつく(自分はダメだなど)
⑤自分の他の記憶と溶け込まず区画化され異物感がある
⑥自己に侵入し自己を苦しめるかたちで出てくる
⑦他の外傷性記憶とリンクしている
※外傷性記憶が消えていくときはこれらがうすまる
□治療
①安全
②想起と喪の作業
③社会との再結合

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『100年足腰』(巽一郎著、サンマーク出版)(2023年2月)

本書『100年足腰』は湘南鎌倉総合病院人工膝関節センター長である巽一郎医師によって書かれたものです。

著者は手術が専門の医師でありながら、初診の患者にはまず3ヶ月の保存療法を勧めており、軟骨が消失した膝痛の46%は手術をしなくても歩けるようになると書かれています。

それは膝痛の原因は多くは姿勢が悪くなり(頭が前に出る姿勢)その為体の使い方(歩き方)が悪くなり膝に負担が掛かるというものです。

巽医師は①体重を減量すること、②大腿四頭筋をよみがえらせること、③内もも歩きをすること、その為の体操などをレクチャーし3ヶ月間やってもらうと多くの場合改善されるというもので、それでも良くならない場合は手術検討するということです。

本書ではその他のことも色々書かれており、例えば血圧は年齢プラス90までであれば症状がなければ大丈夫であるとか、糖尿病の多くは食べ過ぎが原因であり、食べ過ぎの要因の根底にはストレスがあるとか、現在の西洋医学は原因療法でなく対症療法のための薬が出されることが多いなど書かれていました。

私も普段そうではないかと思っていたことがかかれていて、心を強くする思いでした。

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2023年年始のご挨拶(2023年1月)

あけましておめでとうございます。

本年も無事にお正月を迎えることができました。

これもひとえに太玄堂鍼灸院を応援してくださる家族、友人そして患者の皆様のお蔭だと思っております。

少しでも皆様方にお返しができるよう本年も精進したいと思っています。

本年も皆様にとって良い年でありますよう、心よりお祈りいたします。

2023年1月1日
太玄堂鍼灸院 福田毅

2023年年賀状

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