「院長の独り言」ジャンル別

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「院長の独り言」ジャンル別~鍼灸・漢方・東洋医学・東洋思想・気功編

鍼灸・漢方・東洋医学・東洋思想・気功編 ―2023年-2025年―

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易の話のつづき(2023年5月)

前回の易の説明で足りないところがあったみたいなので、今回は前回の補足をさせていただきます。

艮(山)の卦のコアイメージは「覆いかぶさるようにして動かないように押し止める」と前回説明しましたが、艮の卦の「止まる」は分かるが「覆いかぶさる」はどういうことか、とのことですが、例えば山水蒙という卦がありますが、外卦が艮(山)、内卦が坎(水)となります。

コアイメージでは坎(水)は「解決しなければならない問題、困難」となります。

山水蒙をコアイメージで解くと、内に問題があるが、外の艮が覆いかぶさっている。つまり内なる問題が外からフタをされて見えなくなっている、と解釈できます。

蒙は童蒙という言葉もありますが、世間知らず、若気の至りというのに近い、自分の欠点が分からず失敗を犯す可能性がある、ということです。

なので蒙を啓く、啓蒙が大切となります。

あと、梅花心易についてですが、前回述べませんでした。

前回は卦名や卦辞(おみくじを引いたときに書いてある説明文のようなもの)を中心に判断する周易、四柱推命のように得られた卦から自動的に干支を配して五行的(相生や相克)に占う断易(五行易)を述べました。

周易は卦名や卦辞・爻辞で判断するのですが、判断しづらいケースが多い、その為漢の時代に象数という概念で易学上の発展がありました。

象とは現実世界のもの、数とは概念化された本質、ここでは八卦のこと、つまり現実世界のもの一つ一つを全て八卦に分類していくというものです。

それによってそれまでよりも占いの判断がしやすくなりましたが、それでも吉凶の判断が難しい場合もあります。

そのような中で断易(五行易)は明確に吉凶が判断できる利点がありますが、手順に従って干支を配したり六親を配したりと手順が煩雑な面や卦象や卦辞など周易を全く無視している面もあります。

そして梅花心易ですが、梅花心易は立卦(得卦)の方法がこれまでと全く異なります。

周易も断易(五行易)も筮竹やコイン(又はサイコロ)によって、卦を得ます。

梅花心易は現実の現象から卦を立てます。

例えば若い男(艮三)が南(離火)から来た場合に、山火賁という卦を得るというものです。

これは易学上からは大きな転換で、数(ある意味神意)から象(現実世界)を理解するという流れから、象(現実世界)から数(ある意味神意)を理解する流れができたということです。

占卦(得た卦の解釈)としては得た卦を体と用に分け、変卦や互卦も参考に五行的(相生や相克)に体が強まれば吉、体が弱まれば凶とします。

また、卦辞や爻辞も参考にします。

よって占卦(得た卦の解釈)としては周易と断易(五行易)の合わさったものといえます。

ただ、梅花心易は略筮法と同じ一爻変となりますが、本筮法や中筮法では変爻が六爻全てになったり、変爻が無い場合もあります。

易学上としてはこちらの方が本来の易の姿ではないかという問題もあります。

以上、前回の補足をさせていただきました。

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山沢損と風雷益(2023年4月)

今回は易についてです。
易は元々占いとして始まりました。
その後、陰陽という宇宙の法則を表しているとされ、人がどう生きるにかという哲学・思想としても発展します。
東洋医学では易の法則から医学の法則を見つけ出そうという医易学という学問もあります。

易の構成としては、太極から陰陽が生まれ、その陰陽がそれぞれ陰陽に分かれて四象が生まれ、四象がそれぞれ陰陽に分かれて八卦が生じます。
その八卦どうしの組み合わせ、64卦で宇宙全ての陰陽法則が表せるとしています。

占いとしては、卦を出して、卦名や卦辞(おみくじを引いたときに書いてある説明文のようなもの)が64卦それぞれに書かれているのを参考にして占います。
実際に占ってみますと卦辞などが難しく占いを判断しづらいという面があります。
生年月日時間から自動的に干支を配して占う四柱推命という占いがありますが、得られた卦から自動的に干支を配して占う断易(五行易ともいう)があります、これは占いの判断がしやすいという利点があります。
しかしながら四柱推命のように占うので本来の易の陰陽の法則をきちんと表しているのかという面があります。

ここでは試論として、易の64卦は8卦同士の組み合わせとして捉え、8卦それぞれにコアイメージを当てはめ、そのコアイメージから64卦(ここでは山沢損と風雷益)を読み解いてみたいと思います。

山沢損

易書などを読むと山沢損は地天泰の下の一陽を上に与えたもの、自分を減らして他人に与える、「損して得取れ」などと書かれています。
これをコアイメージで読み解いてみると、山(艮)の卦のコアイメージは「覆いかぶさるようにして動かないように押し止める」。
沢(兌)の卦は元々は砂漠のオアシス、湧き水の出る沢で人々が集まり生活を豊かにする、喜びですが、易では享楽という悪い意味合いでも使われます。コアイメージは「喜び、享楽、欲望」。
山沢損をコアイメージで読み解くと「内なる喜び・欲望を外に出ないように抑える」つまり禁欲というようなイメージになります。
ことわざの「損して得取れ」も間違いではありませんが、「若い時の苦労は買ってもせよ」のほうがコアイメージ的には近い感じがします。
一時的に我慢をしよう。そしてその間に自分の力を増強しようというものです。
それゆえ、卦名は損というどちらかというと悪い名なのに、易書などでは吉の卦として書かれています。
易はタイムスパンが長いので最終的に得をするにはどうすれば良いのかという視点で書かれています。

風雷益

易書などを読むと風雷益は天地否の上の一陽が下に入ったもの、上のものが民に施しをしたもの、などと書かれています。
これをコアイメージで読み解いてみると、風(巽)の卦のコアイメージは「一定の力で押し続ける、隙間があればそこに入り込んで押し続ける」。
雷(震)の卦のコアイメージは「今まで動いていなかったものが動き始める、ビーンビーンとした振動」。
風雷益の卦をコアイメージで読み解いてみると、「動き始めたものが背中を押されている」追い風に乗っているというようなイメージになります。
易書で大吉と書かれているのもうなずけます。

今回はコアイメージで山沢損と風雷益の卦を読み解いてみました。
あくまで試論ですが、易の理解の一助になればと思います。

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