「院長の独り言」年度別

「院長の独り言」を時系列でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

「院長の独り言」年度別

2006年7月~12月の「院長の独り言」

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中国のお茶 菊花茶 ~目を養うお茶~(2006年12月)

先日、中国に行った友人がお土産に菊花茶を買ってきてくれました。

昔から中国では長寿のために菊の花を水やお酒に入れると良いという話が伝わっています。

東洋医学では菊は花、葉、根、茎、実みな同じ性質で苦・平で、働きとしては、風熱によるめまいや張った痛み、目を養う、皮膚をよくする、長く服用すると気血の流れを良くし、身体を軽くし、寿命を伸ばすなどの働きがあります。

菊花は視力減退、目のかすみなどに対して同じく目によく働く枸杞(くこ)の実と共に杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)という漢方薬でよく使われます。

漢方薬で菊の花を使うというのも面白いですが、そのような菊の花をお茶として飲む、まさに医食同源ですね。

私は頂いた菊花茶に枸杞の実を入れて飲んでいます。

美味しいですよ。

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ゴビージョル(2006年11月)

先日、友人とモンゴル料理を食べに行きました。

ラム肉の料理が中心で、ラム肉の塩茹でや北海道のジンギスカン鍋と似たような料理もありました。

馬乳酒も飲みましたがこれはアルコール入りヨーグルトドリンクみたいな感じでした。

ちなみに東洋医学では、羊肉は苦、甘、大熱の性質があるので、身体を温める作用や身体を元気にする作用、気持ちを安心させる作用、胃腸をよくする作用などがあります。

モンゴル人は北方に住んでいる為に寒いので身体を温める羊肉は最適なのでしょうね。

ちなみに私が行ったお店はゴビージョルという店です。たまには、他の国の料理を食べるのもいいですよね。

☆ゴビージョル  (モンゴル料理)

札幌市西区琴似1条5丁目ロイヤルホープビルB1F
TEL:011-631-9800
営業時間:11:00~23:30
定休日:無休

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竜巻(2006年11月)

皆さんご存知だと思いますが北海道佐呂間町で11月7日午後に竜巻による被害がありました。

死者9人重軽傷者26人の悲惨な災害でした。

新聞報道などを見ると隣り合った家でも片方は竜巻による被害で家が壊れ隣のもう片方はなんでもないということも起こっているようです。

ちょっとした運命のいたずらといってもあまりにも重いいたずらですね。

ちなみに、竜巻に会ったときの対処の仕方というのをテレビ(9日TBS放送のピンポン)でやっていたので何らかの参考になればと思います。

  1. 竜巻の進行方向に対して直角に逃げる。
  2. 建物の一階特にトイレに逃げる。
  3. 丈夫な壁やコンクリートにしがみつく。
  4. 体勢を低くする。

長い人生、生きていたら何らかのことが起こります。 でもそのための備え、そうならないための備え、それが大事なんだと思います。

東洋医学ではそれを未病治と言うんですよね。

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医術の心 ~チャングムの誓いから~(2006年10月)

『チャングムの誓い』も全54話のうちもう51話まで終わってしまいあと僅かになりました。今回の51話のタイトルは「医術の心」でした。

天然痘にあきらめることなく立ち向かうチャングム、そしてとうとう天然痘を治します。そんなチャングムを見て師でもあり医局長のシン・イクピルは王の主治医にチャングムがなることに同意し王に上奏します。その上奏で、シン・イクピルはチャングムは母の心で治療にあたって素晴らしいと言います。

本当に素晴らしいことですよね。

そういえば、東洋医学のバイブル、黄帝内経の霊枢・九鍼十二原篇にも黄帝の言葉に「余子萬民」というのがあります。

そのまま読めば「余(よ)は萬民(ばんみん)を子(こ)とす。」ですが、「余は萬民を愛(いつく)しむ。」と読みます。

「子」を「愛(いつく)しむ」と読ませているところが面白いですよね。

「子」は名詞ですが、古代漢語では名詞を動詞としても使うんですよね。

現代中国語では名詞を動詞として使わないのでそこが古代漢語と現代中国語の大きな違いの一つです。

患者をわが子と思って治療する、それが医術の心ということでしょうね。

※第46話「医局長の遺書」から第54話「我が道」までを収録。

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寒さと脈の関係(2006年10月)

10月も後半に入り北海道は大分寒くなってきました。札幌でも平野はまだですが手稲山などでは初冠雪がありました。

私は日々の治療で患者さんの脈を診ていますが、このところ脈が浮いている人が多くなりました。

『傷寒論』という2000年ほど前の東洋医学の本にはカゼを引くと脈が浮くと記載されており、その通りで脈の浮いている人の多くは何らかのカゼの症状があります。

また明らかなカゼ症状が出ていない人でも、よく診てみるとカゼに反応するツボに反応が出ているので軽くカゼを引いている状態なんです。

大いなる自然と人の身体は密接に繋がっていて、それを知っている東洋医学はやっぱり素晴らしいですね。

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パウル・クレー展を観に行って(2006年10月)

先日、北海道立近代美術館に『パウル・クレー展』を観に行きました。 開催が終わる(10月9日まで開催)ギリギリでようやく観にいけました。

パウル・クレーは1879年にスイスで生まれ、1940年に亡くなった20世紀を代表する画家の一人です。

パウル・クレーはお伽の国に出てくる様な奇妙な生き物のイメージを描いたり、色彩をモザイクのように組み合わせたり、文字や記号のような形を絵の中に配列したりなどいろんな作風の面があります。

またクレーは自然というものに非常に関心があり、自然を描いた絵がいくつかありまが、それは写実的ではなく、その自然の奥にある何かをイメージとした作品になっているように思いました。

そのためでしょうか、クレーの絵は単に美的なものというよりものごとの本質により近づき、それが彼の作品に深みをもたらしているのだと思いました。

おそらく、芸術は目に見えるものを単に再現することではなく、その背後にある何かを見えるようにするものであるのでしょう。パウル・クレー展を観てそんなことを感じました。

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秋の味覚 梨で身体を養う(2006年9月)

秋ですね。

秋といえばスポーツの秋、読書の秋、そして食欲の秋でもあります。秋には様々な味覚のものがありますが、そんななかで、今回は梨についてです。

今回も中国・明の時代に書かれた本草綱目(ほんぞうこうもく)からみてみましょう。(ちなみに本草綱目では梨の実、花、葉、木の皮。それぞれ項目を分けて書かれており薬としての働きがそれぞれ微妙に異なりますが、ここで述べるのは普段私達が食する実についてです。)

梨は四気五味(しきごみ・東洋的な薬性の分け方)では甘、微酸、寒とあり、多く食べ過ぎると冷やす作用があります。ですから本草綱目では怪我をしているもの、婦人、血虚(けっきょ:血のエネルギー不足)のものは梨を食べ過ぎてはいけないと書かれています。

果物は水菓子(みずかし)ともいわれ、一般にはすべて身体を冷やすものと思われています。 しかし橘などは温の性質があります。ですから果物でも、そのものによって性質が異なるのです。 まあでも、果物全体をみると冷やす性質のものが多いのも確かですが・・・。

梨の効用としては、熱による咳、咽の渇き、火傷のあとに切片にして貼るとか(これなどはアロエと同じ働きです。)、あと中風、大小便の出が悪いとき、酒毒を抜くときなどに使われます。

NHKの『チャングムの誓い』を観ると梨がよく隠し味に使われたりしていますよね。 思うのですが、韓国の料理には唐辛子やニンニクなどを多用し日本に比べて辛いです。漢方では辛いものを多く食すと身体のなかに熱が生じるとされています。だから韓国の人はその熱をとるために長い伝統のなかで自然と梨が料理に使われるようになったのではないでしょうか。

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人間とぉいうものは(2006年9月)

今回は落語についてです。

落語に出てくる登場人物は弱かったり愚かだったりする人間ばかりが出てきます。 これが歌舞伎や講談なんかと違うところで、歌舞伎や講談だと人間離れしたヒーローや立派な人物が出てきて活躍する話がほとんどです。

それに対して落語ではどこか欠点のある人間が出てきます。そして笑いが起こるわけですが、これなどは落語がもつ人間に対しての独特のまなざしがあるように思います。

人間はだれでも愚かしさや弱さをもっています。落語はその人間の愚かさ弱さ儚さを認め、そしてそれを笑い飛ばしているのではないでしょうか。

これが立川談志師匠にいわせれば「落語は人間の業の肯定である。」ということになるのでしょうし、古今亭志ん生師匠によれば「人間とぉいうものは・・・」ということになるのでしょう。

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だって寒いんだもん ~『古典落語 志ん生集』より~(2006年9月)

古典落語 志ん生集先日、本を片付けていたら『古典落語 志ん生集』(古今亭志ん生 ちくま文庫)が出てきて、ついつい読み込んでしまいました。

この本は古今亭志ん生の落語をそのまま文章にしたものです。

本当は実際に生で落語を聞くのが一番なのでしょうが、私は落語を本で読むのも好きです。

そういえば、糸井重里さんが何かのインタビューかなんかで一番好きなフレーズは落語に出てくる「だって寒いんだもん」というフレーズだといっていました。 これは、ろくでもない亭主にずっとついているおかみさんに「なんであんなのと一緒にいるの?」と聞いたときの答えがこの「だって寒いんだもん」なんです。

これは志ん生の『風呂敷』という噺のまくらに使われるものなんですが、落語の面白さの一つはこういう一見単純そうな言葉のなかに深みのあるところなんですよね。

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稗(ひえ)・粟(あわ)(2006年8月)

今回は粟(あわ)と稗(ひえ)についてです。

中国・明の時代の本草綱目によると、粟(あわ)は腎気を養い、脾胃の熱を取り、気を益し、咽の渇きを取り、小便の出をよくする働きなどがあります。

稗(ひえ)は気を益し、脾をよくする働きなどがあります。また稗の苗根には怪我などによる出血を止める働きなどもあります。

現代では稗(ひえ)や粟(あわ)を食することはあまりありませんが、昔は五穀(稲・麦・粟・稗・豆)を食していました。

今でも神社などで五穀豊穣の祈願をされたりしますよね。

ちなみに、五穀は通常は稲・麦・粟・稗・豆の五つとされますが麻(あさ)や黍(きび)を入れた別説もあります。

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稲(2006年8月)

今回は稲つまりお米についてです。

中国・明の時代の『本草綱目』によると稲には補中益気(ほちゅうえっき、気を補う)や下痢を止める働きがあるとされています。

その他には脾胃を暖め小便をみじかくし、自汗(じかん、何もしていないのにだらだら出る汗)を止める働き、気のめぐりをよくするなどの働きもあります。 また米には熱を多く発生し便を堅くする面もあります。

漢方薬としては稲の発芽(穀芽、こくが)を健脾開胃(けんひかいい)・消食和中(しょうしょくわちゅう)の目的で、つまり脾胃虚弱、食欲不振、味が無い、腹満などの症状に用いられます。

穀物は我々が生きていくなかで大変大事なものです。

東洋医学では麦や米のほか、黍(きび)や稗(ひえ)や豆の五つを合わせて五穀とし、食べ物のなかでも重要なものとして位置づけています。

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小麦(2006年8月)

前回は大麦についてでしたが、今回は小麦についてです。

小麦は漢方では「しょうばく」と呼び、精神不安やヒステリーのときに使われる甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)という漢方薬などに使われます。

中国・明の時代の『本草綱目』によると小麦は「心気を養い、心病はこれを食すによろし」と書かれています。その他の効能には咽の渇きを止め、小便の通りをよくし、肝気を養い、女性は妊娠しやすくする働きなどがあります。

また漢方薬として使うには南方産より北方産のほうが良く、皮のほうにも薬効があるので全体を使います。

大麦と小麦、漢方では効能が全然違うんです。

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ビールのもと大麦麦芽(2006年8月)

夏はビールが美味しい季節ですね。 札幌でもいま大通公園などでビアガーデンが開催されています。

ご存知の通りビールは大麦の麦芽汁にホップを加えそれを発酵させてできます。 このビールの原材料である大麦の麦芽の東洋医学的な意味を簡単にですがちょっと述べてみたいと思います。

大麦の麦芽の東洋医学的働き。

1.健脾開胃(けんぴかいい)・行気消食(こうきしょうしょく) 食べ過ぎたときなどに胃腸の働きを高め消化を助ける働きがあります。

2.舒肝(じょかん) 肝臓の働きをよくして気の流れをのびやかにする。

3.回乳(かいにゅう) 乳汁が欝滞して乳房が張って痛んだり、授乳を中止する場合に用います。

以上が大麦麦芽の東洋医学的な主な働きです。

麦芽に消化を助ける働きがあるというのも面白いですね。 ということはビールに加工されても消化を助ける働きはある程度あるわけです。 だからといって食べすぎ飲みすぎにはくれぐれも御注意を!

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『病の世相史』(田中圭一著、ちくま新書)(2006年7月)

病いの世相史―江戸の医療事情先日友人に貸していた本が戻ってきました。

本のタイトルは『病いの世相史―江戸の医療事情』。

著者の田中圭一さんは柴田収蔵という幕末の村医者の日記を翻刻などされている人です。

この本を読むことによって江戸時代の医療文化がどのようなものだったか良く解かります。

例えば江戸時代のお百姓さんは意外にも頻繁に医者にかかっていたんだそうです。

私達の一般的なイメージでは江戸時代は医者の数も少なく一般の庶民はなかなか医者にかかれなかったように思われますが江戸時代の医者の数は多く庶民はよく医者に診てもっらっていたんだそうです。

また人々は薬草を煎じてお茶として飲用して病気の予防に役立て、朝夕に身体にお灸をすえて健康の維持に努めるなど自分自身でも健康に気を付けていました。

信長で有名な敦盛のなかで「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢まぼろしのごとくなり 」というのがありますが、昔の人の寿命は五十歳ほどの短命だとに思われていますが実際は50才を越えて生きた人の数はかなり多かったようです。

そういえば戦国大名の北条早雲は87歳まで生きたんですよね。

一般には江戸時代は無知蒙昧で明治維新による文明開化によりやっと我々は正しい知識を得ることができたとされています。

手塚治虫先生の『陽だまりの樹』にも西洋医学の蘭方医は正義の味方で漢方医は悪役で出てきます。しかし必ずしもそうでない部分もあるのではないでしょうか。

ちょっと脱線しますが、明治時代に脚気相撲と呼ばれるものがありました。

西洋医学を医学の中心にすえようとしていた明治政府が(この当時ドイツ式の軍隊を導入しそれとセットで戦争による負傷に対する外科手術がすぐれているドイツ医学を取り入れました。)政府公認で西洋医学と東洋医学が脚気に対して治療成績を競うというものでした。

報告書を読むと西洋医学のほうが若干良い治療成績になっていますが、報告書が出されたのは脚気病院がスタートしてから3年後にようやく発表されるなどいくつか疑惑があります。

おそらく明治政府の意図したとおりにならなかった為でしょう、その後脚気相撲はうやむやになってしまいました。

この当時西洋医学では脚気の原因が解かっておらず(当時は脚気は細菌によるものと考えられていました)、東洋医学は原因が解からなくても(東洋医学は身体のバランスを整える治療の為)治療でき食養生も含めた東洋医学が一般的には優勢でした。

近年、昔のものであっても良いものは生かしていこうという潮流も生まれていますが、伝統の良さを再認識することは大切なことだと私は思います。

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鑑真和上展(2006年7月)

先日、国宝 鑑真和上展を観に行きました。

これは唐招提寺金堂の大修理を記念したもので唐招提寺に伝えられてきた彫刻や絵画・工芸品などが展示されています。 なかでも国宝に指定されている鑑真和上坐像は今回の展示品の中でも大きな目玉になっています。

鑑真和上坐像も大変素晴らしかったのですが個人的には四天王立像がよかったです。 四天王立像も国宝に指定されています。 ただ残念ながら、四天王のうち広目天と多聞天の2体のみが展示されており他の持国天と増長天がありませんでした。

他にも国宝や重要文化財に指定されているものが多数出展され素晴らしかったです。

私は詳しくないのですが、仏像・仏画や神社仏閣などを観るのが好きです。 なんとなく落ち着くんですよね。

*国宝 鑑真和上展

期間:2006年6月24日~8月20日
時間:9時30分~17時
開催場所:北海道立近代美術館
住所:札幌市中央区北1条西17丁目
連絡先:011-644-6881

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ひやしあめ ~水飴で胃腸を助け、生姜で胃を温める~(2006年7月)

北海道も例年より大分遅いですがようやく夏らしい日が続くようになりました。

暑いとついつい冷たいものが欲しくなりますよね。

私は関西に何年か住んでいたのですが、この時期ひやしあめ(冷やし飴)という飲み物が飲まれます。

北海道も含め東日本ではあまり知られていませんが関西では昔からある定番の飲み物で簡単にいうと水飴と生姜の入った冷たいドリンクです。

面白いのは水飴と生姜が入っていることです。

水飴は漢方では膠飴(こうい)といい胃腸を助ける働きがあります。また生姜は風邪(かぜ)のときなどに使われる生薬ですが実は胃を温める働きもあるのです。

このように冷たいものを飲んでも胃腸をこわさない様に水飴と生姜が入った冷たい飲み物。

それが、ひやしあめなんです。

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