「院長の独り言」ジャンル別

「院長の独り言」をジャンル別でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

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「院長の独り言」ジャンル別~鍼灸・漢方・東洋医学・東洋思想・気功編

鍼灸・漢方・東洋医学・東洋思想・気功編 ―2020年-2022年―

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カボチャ(2022年12月)

今年(2022年)の12月22日は冬至です。

冬至にはカボチャを食べますが、東洋医学的なカボチャの効能を紹介します。

カボチャ
寒熱:温
五味:甘
臓腑:胃、脾
効能:健脾益気(胃腸の働きを高めて元気をつける)、消炎止痛、駆虫(カボチャの種を用いて虫を下す)、解毒

胃腸の働きを高め、元気をつけて、この冬を乗り越えましょう。

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イチョウ(銀杏、公孫樹)(2022年10月)

だんだん寒くなり木々も色づく季節となりました。

モミジなども綺麗ですが、イチョウも綺麗ですよね。

イチョウは銀杏と書きますが、公孫樹とも書きます。

公孫は基本的には君主や諸侯の孫のことですが、若い人の尊称であったり、名字としても用いられています。

ツボでも公孫という名の重要なツボ(脾経の絡穴)がありますが、黄帝の姓(『黄帝内経』の黄帝)が公孫であることから名付けられたとされています。

ちなみに、イチョウの実、ギンナンは漢方の生薬としても用いられます。

主に呼吸困難、咳、痰などに用いられます。

銀杏
性味:甘、苦、渋、平、小毒
帰経:肺
効能:降痰定喘、斂肺止咳、止帯除濁

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静神丸、黒ゴマの効用(2022年9月)

静神丸は黒ゴマと蜂蜜を等分に混ぜたもので、「肺黄を治し、五臓を潤す」とされ、昔は不老長寿の仙薬とされていました。

それだけ黒胡麻には薬効が有るということだと思います。

ゴマには多くの抗酸化物質が含まれ老化防止効果があります。

ちなみに黒ゴマと白ゴマでは栄養学的には成分はほとんど変わらないとされていますが、『本草綱目』では黒ゴマを勧めています。

『本朝食鑑』では白ゴマは肺に、黒ゴマは腎に作用するとしています。

東洋医学では黒ゴマは肝腎の陰を滋養する働きがあり、虚弱体質の改善や、産後の回復、老化による諸症状の改善に使われます。

また潤す働きがあるので、乾燥して出にくい便秘に使われたりします。

胡麻仁
性味:甘、平
帰経:脾、肺、肝、腎
①滋養肝腎、補益精血
②潤燥滑腸

蜂蜜
性味:甘、平
帰経:肺、脾、大腸
①潤腸通便
②清熱、潤肺止咳
③補中、緩急止痛

ちなみに私はすりゴマときな粉を等量混ぜたものに蜂蜜を適量混ぜたものを、たまにおやつ代わりに食べます。

黒豆(黒大豆)
性味:甘、平
帰経:肝、腎
①滋陰補血、利水
②キョ風止痙
③解毒

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生姜と乾姜(2022年8月)

生姜と乾姜はよく使われる生薬です。

どちらもショウガなのですが、使われ方(加工法)が違います。

また中国と日本で生姜と乾姜の指しているものが異なります。

生姜は中国では生のショウガ、日本では乾燥させたショウガをさします。

日本では生のものは鮮姜といって区別します。

乾姜は中国では乾燥させたもの、日本では加熱したものを指します。

中国では加熱したものをホウ姜といいます。

ショウガは生のものは解毒作用や発汗作用が強く、乾燥、加熱することによって体を温める作用がだんだん強くなります。

東洋医学は同じ字でも意味が異なる場合があり、その点も気をつけて学ぶ必要があります。

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打撲や捻挫などの外傷性のケガに対する漢方薬(2022年7月)

私は時代劇が好きなのですが、子供の頃は『遠山の金さん』『江戸を斬る』『大岡越前』『水戸黄門』などテレビで時代劇がいくつも放映されていましたが、残念ながら近年はテレビで時代劇を見かけることが少なくなりました。

テレビ東京系列が昔の時代劇の再放送をしているのと、NHKが割と頑張っていくつか新作の時代劇を制作しているぐらいです。

時代劇ファンとしてはもっと時代劇のテレビ放送が増えてほしいと願うばかりです。

そんなわけで中国や韓国の時代劇もたまにみることがあるのですが、、中国や韓国の宮廷時代劇のテレビドラマでは鞭打ちの刑罰がよく出てきます。

実際に昔には鞭打ちの刑罰が行われており、その後の救命や治療に「通導散」という漢方薬が実際に使われたそうです。

日本では江戸時代の名医である香川修庵の「治打撲一方」が打撲や捻挫などの外傷性のケガによく使われます。

鍼灸でも打撲や捻挫などの外傷性のケガなどに対応した治療があります。

「通導散」も「治打撲一方」も内服の漢方薬ですが、打撲や捻挫などの外傷性のケガの腫れや痛みなどに用いられます。

打撲や捻挫などの外傷性のケガなどでは、整形外科で湿布薬と消炎鎮痛剤の飲み薬が出されるのが普通だと思いますが、東洋医学という選択肢もあり得ると思います。

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夏バテ、熱中症予防(2022年6月)

ラニーニャ現象の影響もあり3か月予報では、今年の夏は平年並みか平年より暑くなる予想です。

今年も夏バテや熱中症に気を付けなくてはなりませんね。

ちなみに熱中症、日射病、熱射病と似たような症状ですが、高温の場所でおこる、熱による障害を総称して熱中症といいます。暑さで体温のコントロールができなくなり、熱が体内にこもってしまった状態です。強い直射日光での場合は日射病、閉め切った部屋や車の中など、高温でおこれば熱射病といいます。

つまり、熱中症の中に日射病と熱射病があるということです。

熱中症予防としては、クーラーや扇風機などを上手に使うこと、水分とミネラルの十分な補給と睡眠が何よりも大切です。

その他の予防法としては例えば食べ物では以前院長の独り言で紹介しましたが、西瓜や胡瓜などのウリ類、東洋医学的にはウリ類は熱をさます清熱の働きと余分な水分を外に出す働きもあるのでお勧めです。

特に西瓜は漢方としても使われるので特にお勧めです。

その他の予防法としては例えば漢方薬では、清暑益気湯などが夏バテ、熱中症予防に使えます。

清暑益気湯は益気生津、清熱化湿の働きで、元気を高め、熱をさます働きがあります。

鍼灸では例えば指の先端の井穴や百会など清熱のツボや元気を高めるツボなど適宜状況に合わせて使います。

一般の方は鍼はできないので足三里や関元などの元気のツボにお灸をしたり、百会や指先の爪もみなどで代用するのも一つの方法です。

今年の夏も元気に乗り越えましょう。

夏バテに関する過去の記事

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ヒューマニエンス クエスト「“皮膚” 0番目の脳」(2022年5月)

2022年4月27日にヒューマニエンス クエスト「“皮膚” 0番目の脳」が放送されました 。

成人男性では皮膚は約3キロの重さだそうです。

五感の中では触覚が一番最初に生まれ、妊娠7週ぐらいから胎児は子宮の中で色々触れ始まります。

赤ちゃんの成長には皮膚を通した接触、スキンシップがとても重要だそうです。

皮膚のセンサーは触覚だけでなく、光を感じるセンサーや色を赤や青などの感じるセンサー、味や臭いを感じるセンサー、高周波域の音を感じるセンサーなどがあることが分かっているそうです。

個人的に面白かったのは傷の修復に赤色や白檀の香が効果があるというものでした。

また皮膚でもオキシトシンが生成されるということで、スキンシップの皮膚刺激が脳に伝わって脳でオキシトシンが生成されるだけでなく、スキンシップの皮膚刺激そのものによって皮膚でもオキシトシンが生成されている可能性があります。

いずれにしても皮膚にはまだ分かっていないことが多く、皮膚の潜在能力には計り知れないものがあるように思いました。

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中医学(2022年4月)

日本の鍼灸における東洋医学の流派で、大きなものは経絡治療と中医学ですが、2021年11月の独り言で経絡治療について簡単に説明しました。(*「経絡治療について」(2021年11月))

今回は中医学について簡単に説明したいと思います。

中医学は1950年代半ば毛沢東の号令により国家プロジェクトとして中国伝統医学を整理統一して、中国国定の伝統医学として中医学が生まれます。

1958年に最初の『中医学概論』が発刊され、その後幾度かの改訂を経て現在に至ります。

国家のお墨付きとなる国定化は、東洋医学以外でも例えば太極拳にもあります。

主要なものだけでも楊式、陳式、呉式、武式、孫式などの太極拳の流派がありますが、私達が一般にカルチャーセンターで習う太極拳は簡化太極拳(24式太極拳ともいう)という中国国定の太極拳がほとんどです。

ちなみに毛沢東は中医学と西洋医学を最終的には結合させて第三の医学を作ろうという遠大な構想を持っていましたが、これはうまくいきませんでした。

1972年の日中国交正常化以降、日本に中医学が伝わります。

中国で行われていた東洋医学つまり中医学がそのまま日本で行われます、この流れは現在まで続きます。

その後日本式中医学というようなものが生まれます。

中医学理論を基本的には用いるのですが、治療は日本式だったり、中医学理論そのままではなく一部改変したりという、日本化した中医学を用いる流派が出てきます。

中医学の日本での受容を考えるときに私は漢字を思い浮かべます。

漢字も中国で生まれ日本に伝わりましたが、日本化されていて現在中国で使われている漢字と、現在の日本の漢字では異なります。

漢字という便利な道具が日本語から無くなることは考えられませんね。

東洋医学の理論も結局は道具ですので、中医学という便利な道具を無くすのはもったいないですし、より使いやすいように改変されて日本に根付いていくのだと思います。

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サイエンスZERO「”知られざる国民病”天気痛の正体に迫る!」(2022年3月)

2月27日(日曜日)午後11時30分からNHKの教育チャンネルで、サイエンスZERO「”知られざる国民病”天気痛の正体に迫る!」が放送されました。

天気痛とは天気の変化により頭痛や慢性痛の悪化、肩こり、倦怠感、めまいなどの身体の不調が生じることをさします。

日本では推定1000万人ほどの患者さんがいるとのことでした。

番組では愛知医科大学客員教授佐藤純さんが気象予報士の協力のもと天気痛のメカニズムを解明した過程を紹介していました。

まず天気が崩れるのは気圧が下がるときなので気圧の変化を感じるセンサーが身体のどこかにあるはずだというところから、内耳がそのセンサーであり、気圧の変化により内耳の前庭神経の興奮が三叉神経や自律神経に影響を与えることにより天気痛が発症することを見つけました。

また天気痛には3パターンあり、大きい気圧の変化によっておこるもの、微気圧変動によっておこるもの、大気潮汐のズレによっておこるものがあります。

微気圧変動とは台風などの大きな気圧の変化が起こる前に(例えば1~2日前に)繰り返し早いスピードで0.5hp程の細かい変動があることで、患者さんによってはこの変動を過敏に感じとることにより天気痛が発症します。

大気潮汐とは太陽によって空気が暖められることによっておこる気圧の一日における周期的な変化であり通常は1~2hp程の一定の変化なのが何らかの理由で2~4hpの変化にズレることがありこれによって天気痛が発症します。

決まった時間に頭痛など天気痛がおきる場合などはこのケースが多いそうです。

東洋医学的にこれをどのように解釈するのかというのは難しいところもありますが、気圧の変化は風邪(フウジャ)として捉えることも可能でしょうし、耳が関係しているところから三焦経、胆経、腎経などが関係してると捉えることもできそうです。
(脈やツボの状態、問診の情報などを総合的に判断しなければなりませんが、・・・)

いずれにしても鍼灸治療をするうえで一つの参考になりました。

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雨水(2022年2月)

今年の2月19日は二十四節気の雨水です。

二十四節気は一年を24に分けたもので、太陽黄経が330度のときです。

雨水とは、空から降る雪が雨へと変り、積もった雪も解けて水になるという意味です。

雨水の前は春が始まる「立春」、雨水の次は、冬ごもりしていた生き物が活動し始める「啓蟄(けいちつ)」となります。

つまりだんだん春が進んでいく様子が表現されています。

ちなみに、西洋占星術では雨水を双魚宮(うお座)の始まりとなります。

北海道では、雨水の頃はまだまだ冬ではありますが、日差しは少しずつ春らしくなってきました。

春が待ち遠しいですね。

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経絡治療について(2021年11月)

鍼灸イコール東洋医学と一般には思われがちですが、実際は必ずしもそうではなくて西洋医学の見立てによって治療を行っている鍼灸師の先生方達もたくさんいます。

また東洋医学による見立てによって治療されている先生方でも、東洋医学には流派のようなものがあり、その流派によって治療方法が異なったりします。

東洋医学の流派で、大きなものは経絡治療と中医学ですが、 今回は経絡治療の成立過程について簡単に説明したいと思います。

経絡治療と聞くと経絡を調整する治療でかなり昔から行われているように思いますが、実際は昭和15年頃に柳谷先生の弟子の岡部、井上、竹山の三人の先生によって生み出されます。

その後普及活動を行い日本全国に広まります、これが現在の経絡治療学会へと繋がるメインの流れとなります。

この時に経絡治療のもう一つの大きな流れが出来ます。

福島弘道先生が入会を申し込んだところ福島先生は視覚障害があったので、それじゃあ視覚障害の方達の普及を任せた、教えに行くから会を組織して普及活動をしてくれということで、これが現在の東洋はり医学会になります。
(東洋はり医学会は現在は晴眼者の方達もたくさん入会されています)

東洋はり医学会は最初は経絡治療学会と全く同じ治療でしたが、後に相克調整、片方刺しなど独自の体系となっていきます。

メインの経絡治療の流れでは後に病因病理の理論を深化させなくてはならないという要望が生まれます。

漢方理論を取り入れて病因病理の理論を深化させる流れと、脈状診を取り入れて病因病理の理論を深化させる流れができます。

また東洋はり医学会の方でも漢方理論を取り入れて病因病理理論を深化させる流れが出てきて、それが漢方鍼医会へとなっていきます。

経絡治療と一言で言ってもその中でも細かく見るといろいろな流派があって、それぞれに特色があります。

経絡治療の成立過程図

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『黄帝内経』について(2021年10月)

『黄帝内経』は東洋医学のバイブル的な存在で、『黄帝内経』の成立により東洋医学の理論の基本部分がほぼ出来上がります。

そんな『黄帝内経』ですが、文章の形式としては、黄帝が岐伯に質問してそれに対して岐伯が答える、というのが基本的な形式となります。

黄帝は中国、漢民族の祖先とされる神様で、岐伯は黄帝の侍医でもありますが、凄い名医、スーパードクターですね。

『黄帝内経』は『素問』と『霊枢』から成ります。
『素問』は81篇、『霊枢』も81篇です。

『素問』の81篇のうち62篇に黄帝と岐伯が出てきます。
『霊枢』の81篇のうち52篇に黄帝と岐伯が出てきます。
『素問』の76%、『霊枢』の64%、二つ合わせると『黄帝内経』の70%に黄帝と岐伯が出てきます。

ちなみに『素問』の他の篇には、鬼臾区が2篇、雷公が7篇、人物が登場しないのが11篇となります。
合計すると81を超えるのは、例えば岐伯と鬼臾区など重複して登場する場合があるからです。

『霊枢』の他の篇には、少師が4篇、伯高が10篇、少兪が4篇、雷公が3篇、人物が登場しないのが12篇となります。

山田慶兒先生は『黄帝内経』は様々な東洋医学の流派の論文集だ、というようなことをおっしゃってましたが、様々あるであろうその理由の一つに登場人物が複数いるということがあるかもしれません。

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五臓六腑は皆 人をして咳せしむ。独り肺のみに非ざるなり。(2021年8月)

『黄帝内経』の『素問』の中に咳論篇というのがあります。
その中にこの「五臓六腑は皆 人をして咳せしむ。独り肺のみに非ざるなり。」という言葉があります。

咳は当然のことながら呼吸器疾患ですから、五臓六腑で言えば肺の臓になります。
逆に言えば、肺の臓が関係していないことは考えられ無いです。
だからといって咳=肺の臓とは限らないということです。

咳があるとついつい咳=肺の臓と短絡的に考えがちですが、例えばストレスが大きく関与してる咳の場合は肝の臓の関与も考えられますし、喘息などで病の経過が長い場合は腎の臓の関与も考えられます。

一つの症状から短絡的に考えてはいけない。
常に身体の全体像を考えなければならない。
「五臓六腑は皆 人をして咳せしむ。独り肺のみに非ざるなり。」
『黄帝内経』の『素問』が教えてくれている大事な宝物の一つだと思います。

■参考文献:

『黄帝内経素問 中』(石田秀美監訳、東洋学術出版社)

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立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花(2021年2月)

昔から美人の例えとして用いられている言葉ですが、芍薬も牡丹も百合も漢方薬の生薬として使われます。

芍薬は白芍と赤芍があり、それぞれ薬効が異なります。
赤芍は芍薬の根、白芍は芍薬のコルク皮を除去し湯通しし乾燥させた根です。

白芍
 性味:苦、酸、微寒
 帰経:肝・脾
 効能:①補血斂陰②柔肝止痛③平肝斂陰

赤芍
 性味:苦、微寒
 帰経:肝
 効能:①清熱涼血②去オ止痛③清肝泄火

白芍は補血・養陰の補剤として、赤芍は清熱・駆オ血の瀉剤として使われます。

牡丹は生薬としては根皮が使われ牡丹皮といいます。

牡丹皮
 性味:苦・辛、微寒
 帰経:心・肝・腎
 効能:①清熱涼血②活血散オ③清肝火

牡丹皮は赤芍と同じように清熱・駆オ血の瀉剤として使われます。

百合は生薬名は「びゃくごう」といいます。

百合
 性味:甘、微寒
 帰経:心・肺
 効能:①潤肺止咳②清心安心

百合は潤す働きがあり基本的には補剤として使われます。

このように私達に身近な植物が漢方薬の生薬として使われています。

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『趣味の園芸 万葉の花「キキョウ」』(2020年9月)

NHKで『趣味の園芸 万葉の花』という番組が放送されていますが、たまたま見た「キキョウ」の回が面白かったです。

万葉集の歌の中に、「朝顔は 朝露負いて 咲くといへど 夕影にこそ 咲きまさりけれ」作者未詳(巻10・2104)というのがあります。
この歌の中の朝顔は今私達が頭に思い描くアサガオとは違う花なのだそうです。

現在私達が知るアサガオは、平安時代の初めに薬草として中国から日本に伝わったものです。
万葉集の頃は朝に美しく咲く花を種類を問わず朝顔と呼んだそうです。

ではこの歌に出てくる朝顔は何の花なのでしょうか?
ムクゲ、ヒルガオなど候補の花に関しては諸説あるそうですが、一番有力なのはキキョウだそうです。
キキョウは鑑賞用としても栽培されますが、薬草としても使われます。

ちなみにアサガオ、キキョウの東洋医学的な効能は、

牽牛子(ケンゴシ、アサガオの種子)性味:苦、寒。帰経:肺、腎、大腸。効能:行水通便、下気・消痰、殺虫消積。

桔梗(キキョウ、キキョウの根)性味:苦・辛、平。帰経:肺。効能:宣肺キョ痰、排膿消腫。

アサガオもキキョウもともに肺に働き、咳などの呼吸困難を改善します。

アサガオもキキョウも同じ呼び名だったことがあり、また効能も同じような効能があるということに、面白味を感じました。

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「月間『医道の日本』定期刊行休止」に思う(2020年8月)

1938年の創刊以来、長らく鍼灸業界をけん引してきた月間『医道の日本』が2020年7月号をもって定期刊行休止になりました。

近年はWEB上での情報発信が増大し、紙媒体の雑誌の市場が縮小する中、鍼灸業界自体の変化も影響していると思います。

『医道の日本』は元々は柳谷素霊が立ち上げ、弟子の戸部宗一郎に託したものです。

明治以降西洋医学中心となり東洋医学が衰退するなか、東洋医学復興運動がおこります。

漢方薬は矢数道明、大塚敬節が中心となり、鍼灸は柳谷素霊が中心でした。

柳谷素霊は東洋鍼灸専門学校という鍼灸の学校も作っています。

そんな先人達の「想い」によって作られた『医道の日本』の定期刊行休止に一時代の終わりを告げているようで、一抹の寂しさを感じます。

が、
これは新たなスタートだとも言えると思います。

先人達の「想い」を、今を生きている私達、鍼灸師一人一人が受け継ぎ、伝え、体現していく。

そのような新たなスタートに、私達、鍼灸師一人一人がしていかなければならない、と思います。

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COVID-19(新型コロナウイルス)感染症について(2020年5月)

当院に来られている患者さんからCOVID-19(新型コロナウイルス)感染症の漢方治療についての論文が日本感染症学会のホームページに掲載されていると教えて頂きました。

『COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方』(金沢大学附属病院漢方医学科 小川恵子)で『中国新型コロナウイルス診療ガイドライン』を基に筆者の見解も含めて書かれています。

簡単に概要をいうと、予防期(無症状病原体保有者)、軽症期(症状が軽く、画像で肺炎症状がでていない)、普通期(発熱や呼吸器症状があり、画像で肺炎が描出されている)、重症期(頻呼吸or血中酸素飽和度の低下or肺炎病巣の急激な進行)、重篤期(呼吸減弱で人工呼吸器が必要orショックを起こしているorその他の臓器不全を併発しICUでの治療が必要)に分け、それぞれに応じた漢方薬が提示されています。

詳しくは論文を見て頂けたらと思いますが、そのなかの一つ清肺排毒湯は軽症から重症の患者に幅広く使えます。
日本の場合は中国と異なりエキス剤が中心となりますので、論文では一番近いエキス剤の組み合わせとして、麻杏甘石湯+胃苓湯+小柴胡湯加桔梗石膏を提示しています。
ちなみに麻杏甘石湯は肺の熱邪をとる漢方、胃苓湯は湿邪によって脾胃がうまく働かないときに使う漢方、小柴胡湯加桔梗石膏は少陽や肺の清熱に働く漢方です。

中国での報告では西洋医学だけの治療群よりも東洋医学も合わせて治療したグループの方が有意に治療効果があったそうです。

もう一つ、はりきゅうあんまマッサージの業界誌である『医道の日本 5月号』において中国鍼灸学会の『COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)』の日本語訳が載っていました。
こちらも簡単に紹介しますと、医学観察期の鍼灸介入(疑い例)、臨床治療期の鍼灸介入(確定例)、回復期の鍼灸介入の3つに分けて書かれて、主なツボだけ紹介します。
こちらも詳細及びその他のツボなどに関しては『医道の日本 5月号』をご覧ください。

医学観察期の鍼灸介入(疑い例)は①風門、肺兪、脾兪②合谷、曲池、尺沢、魚際③気海、足三里、三陰交
臨床治療期の鍼灸介入(確定例)は①合谷、太衝、天突、尺沢、孔最、足三里、三陰交②大ジョ、風門、肺兪、心兪、膈兪③中府、ダン中、気海、関元、中カン 回復期の鍼灸介入は内関、足三里、中カン、天枢、気海

こちらも西洋医学の治療を行っている中で、感染予防の対策をきちんとしたうえで鍼灸治療も参加するというものです。

もう一つ『医道の日本 5月号』に池田先生がCOVID-19(新型コロナウイルス)感染症が疑われるような患者に対して小青竜湯加石膏で寛解した旨の話が載っていました。

日本において私達鍼灸師が治療院で実際にCOVID-19(新型コロナウイルス)感染症の患者さんを治療することは、まずありませんが、何かの参考になればと思います。

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唾と涎(2020年4月)

東洋医学には五行の色体表というのが有ります。
いろんなものを五行に分けているのですが、その中に五液というのがあります。
出典は『素問』の「宣明五気篇」で心は汗(あせ)、肺は涕(はなみず)、肝は泪(なみだ)、脾は涎(よだれ)、腎は唾(つば)となっています。

唾と涎の違いはずっと気になっていました。
唾も涎も唾液のことで同じものなのに、何で分けているのか?
唾をとばすときなど口をすぼめると口先に唾液がより多く出ますが、唾液の出る場所なのか。
(唾液腺には耳下腺、顎下腺、舌下腺などがあります)
唾液の性質には漿液(しょうえき)性と粘液(ねんえき)性がありますが、唾液の性質なのか。
明確な違いは分からないままでした。
臨床上は、唾も涎も区別せずに唾液として捉えその他の症候などから脾か腎かを判別するのが一般的です。
(唾と涎の違いが分からなくても臨床上はそんなに困らないということです)

先日たまたま張明澄の『五行別食事療法』を読んだら面白いことが書いてありました。
(張明澄の東洋医学は個人的には合わないと思うところが多いので、これまでちゃんと読んではなかったのですが)
唾を痰と解釈していました。
慌てて漢和辞典で久しぶりに唾を調べてみたら、やっぱり「つば」なのですが、用例に「唾壺」というのがあって、これが「たんつぼ」のことなんです。
そうすると唾を痰と解釈することもあながち間違いではない。

張明澄は腎は痰というのはおかしい、間違いだとして、五液を肝は泪、脾は涎、肺は涕・汗・唾(痰)、心は血、腎は尿と彼独自に分類しなおしてます。
その分類の是非はともかく、 中医学的にはよく「脾は生痰の源、肺は貯痰の器」と言われるように痰は脾や肺と深い関係があります。
西洋医学的にも、病理産物としての痰は気道、呼吸器に発生するので東洋医学の五臓の中では肺と関係が深いです。
なので、張明澄が痰を肺に分類しなおしていることも理解できるのですが、もっと大きく考えると東洋医学的には痰を客出される病理産物としての痰だけでなく、体の中の水の停滞したものも痰として考えます。
東洋医学では腎は水と関係が深いので、唾つまり痰が腎だと考えることもできます。

まあ結局は唾と涎の違いが何なのか、はっきりとした答えが出たわけではありませんが、お笑い芸人のテツandトモではないですが、「なんでだろう、なんでだろう」と考えることが東洋医学においても大事なのではないかと思います。

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雨水(うすい)(2020年2月)

今年の2月19日は、二十四節気の一つ、雨水です。
太陽の黄経が330度の時で、「雪が雨に変わり、氷が溶け始めるころ」という意味で、大寒や立春の寒さのピークから春が夏に向けて一歩進んだということです。
二十四節気の一つ一つには、ある1日を表す日にちとしての意味と、次の節気までの期間としての意味があるので、次の二十四節気の啓蟄(R2年3月5日)までが雨水の期間となります。
ちなみに黄経330度とは、天球上を一年かけて太陽が通る黄道を、春分の日を0度として計算したものです。

話は変わりますが、現在流行している新型コロナウイルスですが、東洋医学では温病という概念になります。
ちなみにインフルエンザも温病として考えられます。
西洋医学のカゼなどの感染症は東洋医学では外感病といいます。
外感病は大きくは傷寒病と温病の2つに分かれ、傷寒病は寒邪が温病は熱邪が中心です。
この時期に発病する温病は、風温や春温となります。

いずれにしても温病は熱邪が中心となりますので清熱の治療が中心となります。
刺絡治療であれば手足の井穴や百会などのツボに刺絡しますし、鍼であれば気分の熱か血分の熱か内臓の弱りは無いかなどきめ細やかに弁別してそれに応じたツボで治療します。
(漢方も鍼同様きめ細やかに弁別してそれに応じた漢方薬で治療します。)

東洋医学的にはこのような対応となりますが、このような高い伝染性の病は発症した場合は一義的に西洋医学の適応となりますので、当然ですが迷わず西洋医学の病院に行くべきです。
ちなみに、東洋医学的な予防としては正気(元気)を高めて免疫力をアップするのが基本となりますが、体質的に熱タイプの方や肝腎など内臓に弱りのある方は重症化しやすいのでその治療も併せて行います。
一応ご参考のために。

■参考文献:『中医臨床のための温病学』(医歯薬出版株式会社)
『基礎中医学』(燎原書店)

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