養生(健康法)について
健康とは一体何でしょう?
みなさんは、健康についてどのようにとらえていらっしゃいますか?もしかしたら、一人ひとり健康に対するとらえかたが違うかも知れません。
そこで、いくつかの観点から、健康の定義を試みたいと思います。
まずは、広辞苑で「健康」という言葉を調べると、「身体に悪いところがなく心身が健やかなこと。また、病気の有無に関する体の状態」と書かれています。次に、WHO(世界保健機構)の定義をみると、「完全な肉体的、精神的及び社会福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」(WHO憲章前文より)とされています。
以上から察すると、第1は、病気がなく、快眠・快食・快便を得、特に日常生活で困った症状が無ければ、健康であるといって良いかもしれません。第2に、ある種の疾病や器質的疾患があったとしても、QOLの高い生活ができれば健康といって差し支えないのではないでしょうか。
※QOLとは、”クオリティー・オブ・ライフ”、つまり”生活の質”の略で、「より良い生き方や健康的な生活ということを、精神的な豊かさや満足度も含めて質的にとらえる」という考えかたのこと。
ところが、現代人は、必ずしも健康的な生活を送っているとは言えません。例えば、健康のバロメーターである快便ひとつとってみても、多くの女性が便秘に悩まされているのが現状です。便秘を放っておくと、さまざまな病気に発展する可能性があります。アトピー性皮膚炎の患者さんも、便秘の人が多いのですが、便通をつけるだけでもアトピーは大分改善されるのです(もちろんいろんなタイプがありますが)。私自身もアトピーで長年苦しみましたが、最終的には、鍼灸治療や養生を実践することで治りました。
みなさんが健康的な生活を送ることができるよう、お手伝いをするために我々鍼灸師などの治療家がいるのですが、真に健康的な毎日を送るためには、我々の施術を受けるだけではなく、患者さん本人の日頃の養生も大切です。習慣になるまで実際に行うのはなかなか大変だと思いますが、できるところから、ぜひがんばっていただきたいと思います。
養生における3つのポイント
それでは、養生(ようじょう)について具体的に説明いたします。実際に養生として行ってほしいことは以下の3点です。
逍遥
「小説神髄」の坪内さんのことですね(何でやねん)。冗談はさておき、「逍遥」とは、お散歩のことです。『荘子の内篇』の最初に「逍遥遊篇」というのがありますが、「逍遥遊すなわち逍遥(こころまかせ)の遊びとは何ものにも束縛されることのない絶対に自由な人間の生活という意味である。」(『中国古典選 12 荘子 内篇 (福永光司著、朝日文庫)』より)。
心のままにできるだけゆっくりと歩いてください。中にはゆっくりと歩けない人がいます。どうしてもせかせかと歩いてしまう。のんびりができない。四六時中エンジンがかかりぱなしでは疲れてしまいますよ。たまにはのんびりしましょう。また膝が悪い方などは膝が痛くならない程度に歩いてください。
逍遥は心と身体をほぐします、ほぐれれば気血の流れが良くなります。できれば景色の良いところで30~40分以上歩いてください。
現在はウォーキングが流行っていますが、あれはせかせかと歩くものなのでここでいう逍遥とは目的が違います。ウォーキングをされる方は、できれば逍遥もしてください。
参考文献
『中国古典選 12 荘子 内篇』 (福永光司著、朝日文庫)
食べ物
食べ物についてですが、基本的に少食にしてください。たまにはたくさん食べても良いのですが、腹八分目医者いらずということですね。現代人は基本的に食べ過ぎです。特に舌の苔が厚い人は、脂っこいものや甘いものや水分などのとりすぎの傾向がありますので、控えてください。
何を食べたら良いかということですが、それは体質によって様々ですので、診察してみないとわかりません。
また、食養生を指導しているグループがいくつかあります。ひとつは石塚左玄氏のながれをくむマクロビオティックなどや、西式健康法のながれ、私どもの行っている漢方(中医学)の見かたで食べものを指導するやりかたなどがあります。マクロビオティックも食べ物を陰陽に分けますが、漢方(中医学)の分けかたとは少し違います。それぞれの話を聞いて、納得されてから実行されたらよいでしょう。
心もち
イライラせず、心ころころ、気持ちを穏やかに、東北楽天ゴールデンイーグルスです。私も、北海道日本ハムファイターズとともに、東北楽天イーグルスを、陰ながら応援しようと思っていますが、負けてもイライラせず、応援し続ける楽天ファンの皆さんに頭が下がる思いです。
心もちを穏やかにするためは、十分な睡眠も必要です。睡眠は、寝た時間よりも、どれだけ熟睡感があるかが大事です。睡眠不足だとイライラのもとになります。
先秦から漢代にできた『黄帝内経』の「素問・上古天真論篇」のなかで「恬淡虚無なれば病いずくんぞ従いきたらん」(物事にこだわらないさっぱりとした心もちでいればどうして病が来ることがあろうか)と述べられています。
その他、患者さんの体質などにより、特に気をつけていただく点があれば施術のときにお話しします。 また、気功法や静坐法(呼吸法)などを実践されるのも良いことだと思います。2、3知っている功法もありますので、希望のかたにはお教えします。
参考文献
『黄帝内経素問 上巻―現代語訳』(南京中医学院編、島田隆司訳、東洋学術出版社)