東洋医学の基礎知識

東洋医学の基礎知識を解説いたします。「東洋医学の基礎知識」を読むことで、「気について」、「東洋医学の整体観」、「陰陽五行」、「経絡」、「臓腑」、「弁証論治」、「異病同治・同病異治」、「未病治」といった東洋医学の基本的な概念をつかむことができれば幸いです。

東洋医学の基礎知識

東洋医学とは?

東洋医学とは何でしょうか?

当院では鍼灸で治療するのですが、鍼灸を使えば東洋医学なのでしょうか?

鍼灸師の先生方の中には経絡など考えず筋肉や神経の作用を狙って鍼を使う先生もいます。これはこれで一つのやり方ですが、東洋医学的な鍼灸とはかなり違ったものになります。

つまり、東洋医学とは東洋的なものの見方・考え方によって治療を行うものなのです

ここではそのような東洋医学的なものの見方・考え方のなかから特徴的なものをいくつか簡単に説明したいと思います。

気について

気は広い意味での気と、東洋医学においての気とでは少しニュアンスが異なっています。

まず広い意味の気について、古代人は目に見えるものの背後にはっきりとは目に見えないが存在する何か(=気)が存在するとしてすべてのものは気によってできており、ものごとの変化の背後には気の働きがあると考えました。

東洋医学者たちはこのような気が生命の源・エネルギーだとして人体の中を流れていると考えました。これが東洋医学の気になるのですが、その流れる場所や働きに応じて衛気(えき)、営気(えいき)、宗気(そうき)、元気(げんき)などと名前を変えて使われています。

天人相関

これは天(外的環境)と人(人体)は密接な関係があるということです。

気のところでも説明しましたが、すべてのものは気によってできています。このことを「気一元」といいます。これはあなたもわたしも天(=宇宙)も人もすべて気によってできていてつながっているということです。例えば季節の変化が人体に変化をもたらします。春は春の脈を打ち、夏は夏の脈を打ちます。また春にばかり症状が悪くなったり、雨の日に症状が悪くなるなど、天(外的環境)と人は密接につながっているのです。現代科学はものをどこまでも細分化して分析しますが、東洋の見方は細分化する部分もありますが、このようにつながりを重視しているのが面白いところです。

東洋医学の整体観

ここでいう整体はカイロプラクティックのように手技で骨を整えたりする整体のことではありません。

天人相関と重なる部分もありますが、人体は単なる部分の集合ではなく有機的な統一体であり、人と自然も密接に関係した統一体であるというものです。

例えば手の病は手のみの病ではなく他の部位の病変が手に影響しているということもありますし、手の病変が他の部位に影響を与えることもあります。

また部分が全体を反映しているということもあります。例えば耳などは単なる耳という部分ではなく身体全体を反映しています。これは耳だけでなくお腹や手などにもみられます。 また季節や天候なども人体と関係しているということです。

陰陽について

陰陽五行説が東洋のものの見方・考え方のなかで有名ですが、もともとは陰陽説と五行説は別のものでした。陰は日の当たらない丘の側面を表す会意文字で、陽は日の当たる丘の側面を表す会意文字です。

陰陽学説は宇宙間のすべてのことがらは陰陽の対立と統一によって起こるとするものです。例えば右があれば左があり、上があれば下があり、昼があれば夜があります。上だけで存在しているのではなく下が存在することによって上も存在するのです。

そして陰陽は絶対的なものではなく相対的なものであり、一定の条件化で相互に転化するというものです。例えば太陽と月では太陽は陽で月は陰ですが、月と星では月が陽で星が陰となります。(ここで星は恒星で月は衛星だからなどとは考えないでくださいね。あくまで目で見える明るさでの比較です。)

このような陰陽の法則を追求したものが易になるのです。(易は単なる占いの本ではありません。)

五行について

五行は木・火・土・金・水の五つですが、もともとは五材といいました。水・火は民の頼って生きるもの、木・金は民の興作に不可欠のもの、土は万物の因って生ずるものという民にとって必要な五つのものという素朴なものが始まりです。それが次第に発展していき現在の五行学説になりました。五行の行はいろんな説があるのですが、「めぐる」や「理に従うこと」ということから付けられたと思います。

五行説は陰陽説のように分類することよりも事物の相互関係を明らかにすることのほうに意味があります。東洋医学では肝は木、心は火、脾は土、肺は金、腎は水に配当されています。例えばストレス性胃潰瘍などは木と土の関係、土(脾胃)が木(ストレスにより肝が高ぶる)に克される(やっつけられる)と説明します。

経絡について

経絡については知っていらしゃる方が多いと思います。経と絡は実は分かれていて大きな幹の流れを経と呼びそこから分かれた枝の流れを絡といいます。

簡単にいえば経絡は気の運行する通路です。もっと簡単にいえばツボを結んだ線といえます。歴史的にツボと経絡のどちらが先に発見されたのかは難しい問題ですが、おそらく別々に発見され、それが後に結び合わさったのでしょう。

経絡には通常の気の流れみちである十二の正経脈と排水路のような働きをする八つの奇経脈があります。また十二の正経脈はそれぞれに経別・別絡・経筋・皮部という別の経絡の流れを持っている一大ネットワークです。この経絡が体のあちこちをつないでいるので私たちはいろんな活動が出来るのです。

臓腑について

昔の人はお酒を飲むと五臓六腑に染み渡るといいましたが、この五臓六腑が東洋医学では非常に重要になります。

五臓は心臓、肺臓、肝臓、脾臓、腎臓の五つで、六腑は胃、大腸、小腸、胆、膀胱、三焦の六つです

これらの臓腑は西洋医学の捉え方と重なる部分もありますが基本的には異なっています。三焦などは東洋医学独自のもので働きとしてはありますが形のないものです。またイライラは肝臓と関係が深いなど感情の働きも臓腑の働きと関係が深いとしていることなども特徴です。

東洋医学では自然治癒力がきちんと発揮されないのはこの五臓六腑がちゃんと働かないからだと考えるのです。ですから鍼灸によってこの五臓六腑の疲れを取り、きちんと働くようにすることが大事です。

弁証論治について

弁証論治とは東洋医学的な病の本質である証を決定しそれに基づいて治療をすることをいいます。

簡単にいうと五臓六腑や経絡がどのようなアンバランスになっているかということが証なのです。

この証が東洋医学では一番大事で、これが間違っているといくら治療しても治りません。最初から証がはっきりとは決定できず何回か治療してから正しい証がわかることもあります。

証を見つけるために問診はもちろん舌、脈、お腹、背中、手足のツボの状態などを詳しく調べます。

この証がわかればあとは鍼灸や漢方薬などで証に随って治療するのです。

異病同治・同病異治について

弁証論治のところでも説明したように東洋医学は証に随って治療します。病名によって治療するのではないのです。ですから○○病だからこのツボというのは東洋医学本来の治療ではないのです。病名と証は全く別のものなのです。

ですから異なった病名でも同じ証のこともありますし、同じ病名でも異なった証のことがあります。

異病同治・同病異治とは異なった病名でも証が同じであれば同じ治療をするし、同じ病名でも証が異なれば違った治療をするということです。

未病治について

未病治は病になる前に治すということです。

臓腑や経絡などの体のアンバランスが病の本質だと弁証論治の説明のところで述べました。

体のアンバランスが全く無ければそれが一番いいのですが、実際は健康な人でも何らかの傾き(=アンバランス)があります。

からだの傾きがある一定の限界を超えると病気になるのですが、病気になる前に傾きを少しでも減らしておくことは大切な予防になります。これが未病治ですね。

また病は伝わり変化するものです。例えば肝臓が悪かったとして病が進んで肝臓から脾臓や腎臓などが悪くなることがあります。そのため肝臓を治療しているときに脾臓や腎臓などに病が伝わらないようにする、これも未病治といいます。

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