かんたん中医学講座

このページは、東洋医学(中医学)理論を解説するページです。『東洋医学について』、『東洋医学の基礎知識』、『東洋医学簡史』をベースに、『院長の独り言』、『養生』などを掲載いたします。

かんたん中医学講座 第2回「臓腑について」

臓腑の働きは、生命の働き

みなさん、こんにちは。お久しぶりです。前回の「気・血・津液について」はいかがでしたか?はじめて中医学に触れたかたは、難しかったかもしれません。でも、投げ出さずついてきてくださいね。10回目には、おそらく中医学の概要をつかむことができるようになると思います。

何ごとも、習いはじめは大変です。しかし、少しずつ理解できるようになってくると、見る世界が変わってきます。例えば、お友だちやご家族を観察すると、「この人は、肝の血が不足し、肝の気が実(過剰)になった状態かもしれないないなぁ」なんて、気になるようになってきます。そうなったらしめたもの。みなさんは立派な「東洋医学人間(中医学人間)」となり始めた証拠です。

前置きはさておき、そろそろ第2回目「臓腑について」をはじめたいと思います。「生命の働き」に関するお話を致します。

「はぁ〜」なんてため息をつかないで、しっかりとついてきてくださいね。ではいきますよ。

五臓六腑の関係を示す蔵象学説

昔からお酒を飲むと五臓六腑にしみわたるといいますが、五臓六腑の五臓とは、心、肺、脾、肝、腎のことで、六腑とは、胆、胃、大腸、小腸、膀胱、三焦を表しています。今回は、この五臓六腑を中心にお届けいたします。

中医学では、人体の臓腑の生理機能と病理変化およびその相互関係を、蔵象学説により示しています。

この「蔵象」の「蔵」という字は、内に深く隠されたものを指しています。後世になって体の内部の臓腑をあらわす場合には、特に「臓」の字を用いるようになりました。そして、「蔵象」の「象」という字は、現象として外面に現れることを示します。つまり、蔵象とは表に現れる臓腑の機能ということにでもなりましょうか。この蔵象学説により示されている臓腑の機能は、現代西洋医学とは違うところがいくつかあります。

蔵象学説の特徴

中医学における臓腑の機能は、以下の4つの点で西洋医学とは大いに異なっています。

  1. 蔵象学説における各臓腑は、単に解剖学的な臓器ではなく、生理的な機能単位になっている。例えば「心」は現代医学の心臓だけを指すのではなく、循環器系や一部の神経系の機能も包括している。
  2. 臓腑の機能は、生理機能と病理機能を緊密に結合させたものであり、「生理機能から病理変化を」、「病理変化から生理機能を」知ることができる。
  3. 五臓を中心に、六腑、五官、形体など組織器官を関連づけた5系統としてとらえ、各系統に縦の連係が存在するだけでなく、各系統に密接な横の関係があり、人体を五臓を中心とした整体※1 とみなしている。
  4. 人体を整体としてとらえるのと同時に、臓腑系統と外界環境は密接な関連性があるとし、人体と外界との整体性も重視する。

蔵象学説の主な内容は、五臓、六腑、奇恒の腑、臓腑と肢体、臓腑と精神思惟活動の関係などについて述べています。

それでは次に「五臓六腑」の働きについて、順番に見ていきましょう。

まずは、「五臓」の働きからです。五臓は、心、肺、脾、肝、腎の五つです。それぞれの臓に対して、他の臓との関係、その臓と最も深い情緒、味覚、季節などの関係性を整理して説明したいと思います。

※1 「整体

ここでいう整体とは、「有機的に統一され、『全体と部分』、および『部分と部分』がバランスよく整っている」というような意味です。

心(心包※2は心に含まれる)

  1. 「心は小腸と表裏をなす」。これは、心と小腸が密接な関わりがあることを示しています。
  2. 「血脈を主る」。心が血の生成と脈管内での運行とに大きな関わりがあるということで、西洋医学の心臓と血液循環の関係と似ています。
  3. 「神明を主る」。神明とは、精神、意識、思惟などを指し、心が精神思惟活動を主宰していることを示しています。「心は神を蔵す」ともいいます。
  4. 「舌に開竅(かいきょう)する」。「舌は心の苗たり」ともいわれ、舌と心との関係が、最も密接であることを示しています。
  5. 「汗は心の液である」。これは、汗の生成と排泄が、心と密接な関係があることを示しています。

  1. 「肺は大腸と表裏をなす」。これは、肺と大腸は密接な関わりがあることを示しています。
  2. 「気を主り、呼吸を主る」。これは、肺が気の生成と運搬に関与し、呼吸を主宰していることを示しています。
  3. 「宣発粛降を主る」。宣発とは、外向き上向きに布散することであり、粛降とは下向き内向きに収斂することを示しています。
  4. 「水道を調節する」。これは、肺が水液代謝を調節し維持することを示しています。
  5. 「鼻に開竅する」。これは、鼻は肺の門戸で気体が出入りする通路であることを示しています。
  6. 「涕(てい)は肺の液である」。涕は鼻腔内の分泌物で肺と関係が深いことをあらわしています。
  7. 「五志は憂である」。これは、肺が憂という情緒と関係が深いことをあらわしています。
  8. 「肺―金―白―辛―西―秋」。肺は五行では金、五色では白、五味では辛、五方では西、五季では秋になります。
※2 「心包

心を包む膜であり、心に付属するものとして考えられている。

※3 「五志

怒・喜・思・憂・恐という五つの精神情緒のことで、五臓にそれぞれ対応している。

※4 「五行

木・火・土・金・水という五つの要素のこと。世界のすべての事象はこの五つの要素に分けることができる。

※5 「五色

青・赤・黄・白・黒という五つの色のことで、五臓にそれぞれ対応している。

※6 「五味

酸・苦・甘・辛・鹹という五つの味のことで、五臓にそれぞれ対応している。

※7 「五方

東・南・中央・西・北という五つの方位のことで、五臓にそれぞれ対応している。

※8 「五季

春・夏・長夏・秋・冬という五つの季節のことで、五臓にそれぞれ対応している。

  1. 「脾は胃と表裏をなす」。これは、脾と胃とが密接な関わりがあることを示しています。
  2. 「運化を主り、後天の本である」。これは、脾が胃と共同して飲食物を消化し、水穀の精微や水液を吸収して運輸する機能を示しています。
  3. 「昇清を主る」。これは、脾が清(精微物質)を上昇・運輸することを指しています。脾は、水穀の精微を吸収して肺に上輸し、心・肺と共同して気血を化成して全身に輸布し栄養します。
  4. 「生血・統血する」。これは、脾胃が運化した水穀の精微は、血を化生する源であり、また脾気は血液を脈内に統摂して外部に漏れさせないようにすることを示しています。
  5. 「肌肉・四肢を主る」。これは、脾胃が運化した水穀の精微によって肌肉・四肢が栄養されることを示しています。
  6. 「口に開竅する」。これは、脾の機能は味覚・食欲と密接に関係し、機能状態が口に反映されることを示しています。
  7. 「涎(えん)は脾の液である」。これは、脾と涎は関連が深いことをあらわしています。涎は、よだれのことです。
  8. 「五志は思である」。これは、脾が思という情緒と関係が深いことをあらわしています。
  9. 「脾―土―黄―甘―中央―長夏」。脾は五行では土、五色では黄、五味では甘、五方では中央、五季では長夏になります。

  1. 「肝は胆と表裏をなす」。これは、肝と胆が密接な関わりがあることを示しています。
  2. 「疏泄を主る」。これは、肝が気の疏通と昇発・宣泄の機能を持つことを示しています。
  3. 「血を蔵す」。これは、肝が血を貯蔵し血流量を調節することを示しています。
  4. 「筋を主る」。これは、肝と筋の密接な関係を示しています。
  5. 「目に開竅する」。これは、肝は目と関係が深いことを示しています。
  6. 「涙は肝の液である」。これは、肝と涙が関係が深いことを示しています。
  7. 「五志は怒である」。これは、肝が怒という情緒と関係が深いことをあらわしています。
  8. 「肝―木―青―酸―東―春」。肝は五行では木、五色では青、五味では酸、五方では東、五季では春になります。

  1. 「腎は膀胱と表裏をなす」。これは、腎と膀胱に密接な関係があることを示しています。
  2. 「精を蔵し、生殖・発育を主り、先天の本である」。これは、「精を蔵す」のが腎の主要な機能であり、腎が蔵する精は「腎精」と呼ばれ、生命の根本であることを指しています。
  3. 「水を主る」。これは、腎が水液代謝を調節する機能をもつことを示しています。
  4. 「納気を主る」。これは、腎が肺の吸入した気を取り入れて呼吸を調節する機能をもつことを指しています。
  5. 「骨を主り、髄を生ず」。これは、腎精が骨格の成長発育を促進し、骨髄・脳髄を滋生することを示しています。
  6. 「耳に開竅する」。これは、腎は耳と関係が深いことを示しています。
  7. 「二陰を主る」。これは、二陰とは前陰(尿道と外生殖器)と後陰(肛門)であり、腎と関係が深いことを示しています。
  8. 「唾は腎の液である」。これは、腎が唾(つば)と関係が深いことをあらわしています。唾と涎は、ともに口津(唾液)ですが、やや粘調なの唾で、希薄なのが涎です。腎の液が唾で、脾の液が涎ということです。
  9. 「五志は恐である」。これは、腎は恐という情緒と関係が深いことをあらわしています。
  10. 「腎―水―黒―鹹―北―冬」。腎は五行では水、五色では黒、五味では鹹、五方では北、五季では冬になります。

次に、「六腑」の働きに移ります。

六腑は胆・胃・大腸・小腸・膀胱・三焦の六つです。共通の働きとしては、飲食物やその糟粕(そうはく、かすのこと)の伝導と排泄です。

では、六腑について、1つずつみていきましょう。

  1. 「肝と表裏をなしている」。これは、肝と胆が密接な関係にあることを示しています。
  2. 「胆汁の貯蔵と排泄」。これは、西洋医学と同じです。
  3. 「決断を主る」。これは、胆が事物を判断するということがらに関与していることを示しています。

  1. 「脾と表裏をなす」。これは、胃と脾が密接な関係があることを示しています。
  2. 「水穀の受納と腐熟を主る」。これは、胃が消化吸収の機能をもつことを示しています。
  3. 「通降を主る」。これは、飲食物の下方への運行を示しています。

※西洋医学では、飲食物は主に小腸から吸収し、東洋医学では、主に胃から吸収するというように、飲食物の吸収する場所の考えが異なっています。ただし、西洋医学でもアルコールなどは胃から吸収されるとしています。

小腸

  1. 「心と表裏をなす」。これは、小腸と心が密接な関係があることを示しています。
  2. 「受盛の官」。これは、胃で腐熟(消化)された水穀の精微のうち、濁の部分を受け取ることを示しています。
  3. 「清濁を必別する」。これは、胃から送られた濁を、さらに清と濁に分け、濁を大腸に送ることをあらわしています。

大腸

  1. 「肺と表裏をなす」。これは、大腸と肺が密接な関係があることを示しています。
  2. 「槽粕の伝導を主る」。これは、糟粕(かす)を肛門から出すことをあらわしています。

膀胱

  1. 「腎と表裏をなす」。これは、膀胱と腎が密接な関係があることを示しています。
  2. 「尿の貯蔵と排泄」。これは、西洋医学とほぼ同じです。

三焦

  1. 「心包と表裏をなす」。これは、三焦と心包が密接な関係があることを示しています。
  2. 「気機の昇降出入を主る」。気機の昇降出入とは、前回の「気・血・津液」で説明したとおり、気が昇ったり、降りたり、出たり、入ったりすることで、三焦がこれに関与していることを示しています。
  3. 「水液運行の通路である」。これは、三焦が水液の運行・代謝に関与していることを示しています。
  4. 「三焦の部位」。三焦は、上焦、中焦、下焦の三つを合わせたもので、隔膜より上を上焦、隔膜から臍までを中焦、臍から下を下焦としています

奇恒の腑について

脳・髄・骨・脈・胆・女子胞(子宮)を奇恒の腑といいますが、五臓六腑が中心で、重要度が低いのでここでは割愛します。脳・髄・骨・脈・胆・女子胞(子宮)を奇恒の腑といいますが、五臓六腑が中心で、重要度が低いのでここでは割愛します。

五臓六腑のまとめ

以上をまとめると、心・肺・脾・肝・腎の五臓を中心として人体の機能を分け、その相互作用によりバランスよく人体の機能が働くと考えたのが、東洋医学の臓腑観といえます。

例えば、呼吸で言えば、肺が中心ですが、腎も呼吸に関与しています。ですから、喘息では、肺だけではなく、腎も関与している可能性があると考えるわけです。

今回は量が少し多くなってしまいましたが、いかがでしたか?今回も1回目同様、少し難しかったかもしれません。しかし、何度もいいますが、10回読めば中医学の全体像が見えてきますので、是非来月も懲りずにお読みください。

もう少しで9月になります。読書の秋です。中医学を学ぶにもいい季節です。はりきっていきましょう。

以上で第2回目の講義、「臓腑について」を終わりにしたいと思います。ご精読ありがとうございました。では、次回までお元気で。またお会いしましょう。

※次回は「経絡について」をお届けします。

参考文献

基礎中医学』(神戸中医学研究会編、燎原書店)

臓腑経絡学』(藤本 蓮風、奥村 裕一、油谷 直著、森ノ宮医療学園出版部)

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