かんたん中医学講座

このページは、東洋医学(中医学)理論を解説するページです。『東洋医学について』、『東洋医学の基礎知識』、『東洋医学簡史』をベースに、『院長の独り言』、『養生』などを掲載いたします。

かんたん中医学講座 第5回「病因病機について」

みなさん、お久しぶりです。福田です。

かんたん中医学講座は今回で第5回目です。10回の講義も今回で半分終わったことになります。後半に向けて頑張っていきましょう。

さで、今回のテーマですが、「病因病機について」、すなわち「どの様な原因で病は起こるか」といったお話を致します。

さっそく講義を始めてまいりましょう。

「病因病機」の「病因」は病の原因のこと、「病機」とは病理のことで病のメカニズムのことです。

もっとひらたく言えば、病因病機は病のストーリーを考えるということです。

病因について

東洋医学の病因論としては陳無擇の外因(風寒暑湿燥火によるもの)、内因(喜怒憂思悲恐驚によるもの)、不内外因(内因外因以外の飲食不節、労倦、外傷、虫獣傷など)の三因に分けたものが重要なものでありますが、ここではもう少し細かく分けてみたいと思います。

外的環境要因

外的環境要因は天候のことで、東洋医学的には風寒暑湿燥火に分けます。

身体の状態にもよりますが、風寒暑湿燥火が大過(多すぎても)不及(少なすぎても)身体のバランスを崩す要因になります。

例えば夏が暑過ぎると当然身体のバランスを崩しますが、冷夏過ぎても身体のバランスを崩す要因になると考えます。

東洋医学では風は肝、寒は腎、暑・火は心、湿は脾、燥は肺に関係します。

心的要因

心の平安が健康に与える影響は非常に大きいものがあります。

心の働きというものは個々人の性格にもよるところもあり難しいものですが、養生の第一は心の平安といってもいいと思います。

とは言え、人生は山あり谷あり、様々なことが起こるもの、心は揺れ動いて当然です、一時的に心が揺れ動くのはいいのですが、それにずっと囚われるのは身体のバランスを崩す要因になります。

東洋医学的には喜は心、怒は肝、思は脾、憂悲は肺、恐驚は腎に関係します。

生活環境要因

生活環境要因とは飲食、睡眠、運動、排泄などに関することです。

飲食は食べ過ぎても、過度なダイエットもよくありません。

食べ過ぎれば湿痰という病理産物を生み身体のバランスを崩す要因になりますし、過度なダイエットや食事のバランスの偏りは虚(弱り)や身体のバランスを崩す要因になります。

東洋医学的には酸味は肝、苦は心、甘は脾、辛は肺、鹹は腎に関係します。

運動も運動不足は気血の停滞を生みますし、オーバーワーク(過労)が続けば虚(弱り)を生み身体のバランスを崩す要因になります。

睡眠不足や睡眠過多、下痢や便秘が続いても身体のバランスを崩す要因になります。

社会的環境要因

社会的環境要因は職場環境や家庭環境などのことで、生活環境要因や心的環境要因とも重なるところもあります。

例えばデスクワークが多ければ当然運動不足になりますし、職場でのストレスが多くても身体に負担になります。

体内要因

ここでは何らかの要因により生じた、気滞、湿痰、オ血、内生五邪などの病理産物が新たな病を生む要因になることです。

内生五邪は風寒湿燥火の五つが外的環境要因としてではなく何らかの要因で内より生じたものです。

その他の要因

外傷や体質など。

病機について

病機についてですが、突き詰めると正気(元気)と邪気との戦いです。

そこから派生して戦いの場は何処なのか、邪気はどんなタイプなのか、正気と邪気ではどちらが優勢かということが病機の基本となります。

戦いの場は何処なのか

大きく分けると身体の表側(表証といいます)と身体の裏側(裏証といいます)に分かれます。

その他に例えば五臓の中の何の臓が戦いの場なのか、あるいは何処の経絡が戦いの場なのかという見方もあります。

邪気はどんなタイプなのか

例えば熱タイプなのか、寒タイプなのか、あるいは、気の停滞(気滞)か、血の停滞(オ血)か、水の停滞(湿痰)かなどに分けます。

正気と邪気ではどちらが優勢か

正気が不足してうまく身体が機能しない状態や邪気を追い出すのに十分な味方(正気)がいない状態を虚といいます。

この場合は味方を増やす必要があります。

これを補法といいます。

また、正気はある程度十分にあり邪気と激しく戦っている状態を実といいます。

この場合は正気が邪気をやっつけるのを助ける方法をとります。

これを瀉法といいます。

咳を題材として、いくつか例を上げてみます。

健康体の人がカゼを引いて咳が出たとします。

この場合外から来た風寒の邪が病因で、身体の表側が主戦場でその影響で肺の働きが低下している状態です。

正気は十分にある状態で証としては風寒束肺といいます。

この場合は表側の寒邪を追い出せば咳もよくなります。

カゼではないのに咳が出たとします。

いろんなパターンが考えられますが、例えば他に病が無く正気も十分にあれば、肺の気の停滞が問題だったりします。

肺気不宣ともいいますが、肺の気の停滞を無くせばよくなります。

カゼは治ったのに咳だけ残るとか、ストレスによって咳が起こるとかはこの状態のことが多いです。

何らかの要因で肺の気が不足して咳が出たとします。

肺気虚といいますが、肺の気の不足により肺がうまく機能しない状態です。

もともとの体質や病が長引くなどして肺の気の不足したもので肺の気を補うことでよくなります。

以上、病因病機について簡単にですが説明しました。

最後に病のストーリーを考える上で思うことを少し述べます。

一つは、時系列です。

病の初めから現在までを時系列に沿って考える病のストーリーが見えてくることがあります。

もう一つは、その人のストーリー、その人の人生のストーリーも考慮にいれることです。

その人その人で異なった人生のストーリーを生きています。

中には幼少期からの親子関係の問題など、単純に心というよりも、魂という言葉の方がより合うような心の奥底の問題がある場合もあります。

初診時の問診では分からずある程度治療を続けて信頼関係が生れてから初めて分かることもあります。

そのまんまのその人を理解すること、というか分かろうとする想いが大事なのだと思います。

これで第5回目の講義、「病因病機について」を終わりにしたいと思います。ご精読ありがとうございました。

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