かんたん中医学講座 第7回「証・弁証について」
みなさん、お久しぶりです。福田です。
かんたん中医学講座も今回で第7回目となります。さあ、頑張ってまいりましょう。
今回は東洋医学的な診断とそれをどう導きだすかについてお話をいたします。
ではさっそく第7回目講義を始めます。
東洋医学の本質は弁証論治や随証治療であるといわれます。
弁証論治は証を弁えて(正しく判断して)それに基づいて治療する(論治)ことであり、随証治療とは証に随って治療するということです。
では東洋医学の本質ともいえる証とは何なのか?
『漢方用語大辞典』(燎原)では、
証は
1.症候の意味。頭痛・腰痛・下痢など。
2.病人のあらわすいろいろの症状を、漢方独自の診断方法によって、総合観察して、その病人に葛根湯で治る確証があればその病人には葛根湯の証があると診断する。
3.体内の病状が外にあらわれたもの。肝腎肺心脾は体内に位置しているので見るのは難しいけれど、五官の変化した状態を見てその内臓の病状を証名として施治する。
とされ、
『鍼灸医学辞典』(医道の日本社)では、
証は
身体の病変のうち外にあらわれた徴候で、病の本態を証明するもの、また処方を決めるための証拠となるものをいう。
とされています。
なかなか難しいですが、簡単に言うと証とは東洋医学的な病の本質(体の歪み)であり治療指針です。
医療であるからには、何らかの治療指針が必要です。
あん摩やマッサージであれば筋肉の凝りが体の歪みであり治療指針でもあります、カイロプラクテックや一部の整体では骨のズレを、操体法であれば関節の動きの差異を、一部の整体では姿勢や足の長さなどを体の歪みとし治療指針としています。
東洋医学は基本的には内科学です。
見えない体の内部(五臓六腑、気血水、経絡など)の歪みを病の本質として捉え、それを是正することが治療指針となります。
それでは直接目で見れない体の内側がどうなっているのかをどうやって知るのか?
東洋医学では、目で見れない体の内側の状態は必ず体の外側に現れると考えています、これを蔵象といいます。
つまり、身体の外側に現れる様々な情報を分析することで体の中の状態が分かります。
例えば肝の臓が悪い場合は、基本的には、胸脇部の張り・痛み、イライラしやすい、怒りっぽい、めまい、手足のケイレン・引きつり、目の異常、ソケイ部の病変、月経異常などの症状が現れ、また舌・脈・ツボなどにも肝の情報が現れます。
肝が悪いからといって、これらの症状がすべて現れることは実際は少ないです。
だからといって1つの情報だけでは根拠が足りませんから、少なくとも3つ以上の根拠となる情報があれば肝に異常があると推測することが可能です。
また肝は、疏泄作用(巡らす働き)、筋を主る、血を蔵す、目に開竅するなどの働きがあるのでそこから上記以外の情報であっても肝に関係しているかどうかを判断できる場合もあります。
このようにして証を推察していくわけですが、あくまでも推察ですのでその証が本当に正しいのかどうかは分かりません。
実際に治療を行ってその治療結果から再び証が合っていたのかどうかを考察するという繰り返しによって正しい証を求めます。
一応、肝以外の五臓の基本的な症状を簡単に記します。
- 心:動悸、胸痛、不眠、健忘、多夢、譫語、舌痛、意識がはっきりしない
- 肺:咳嗽、喀痰、息切れ、鼻の症状、咽喉の症状、呼吸の異常
- 脾:食欲不振、腹痛、下痢、四肢の異常、内臓下垂、皮下出血
- 腎:腰やひざのだるさ・痛み、耳鳴り、難聴、閉経、浮腫、二便の異常、発育障害、老化
これで第7回目の講義、「証・弁証について」を終わりにしたいと思います。ご精読ありがとうございました。