かんたん中医学講座 第10回「補足事項」
みなさん、こんにちは。福田です。
今回で、かんたん中医学講座は最後となります。
今回のテーマは「補足事項」ということで、思いつくままに述べたいと思います。
まず鍼灸の書籍から、
『昭和鍼灸の歳月』(上地栄著、績文堂)は、柳谷素霊とその弟子の話、鍼灸への情熱が感じられる本。
『鍼灸真髄』(代田文誌著、医道の日本社)は、代田文誌が名人沢田健の治療を見学し見聞きしたことを書いた本。
『脈診を語る』(東洋はり医学会)は、福島弘道らの脈診に関する座談会をまとめた本。
『弁釈鍼道秘訣集』(藤本連風著、緑書房)は、藤本連風先生が『鍼道秘訣集』を解説した本で、私はこの本に感動して藤本先生の門を叩きました。
この他にも鍼灸に関する本で好きなものはいっぱいあるのですが、とりあえずパッと思いついたものを上げてみました。
私が藤本先生のご著書『弁釈鍼道秘訣集』で、特に心惹かれたのは、「心持の大事」や「三つの清浄」、また序文に書かれている開祖の夢分翁が元々は禅僧だったが自分の母の病気を治したい一心で様々な流派の鍼を学び夢分流を作った、というはなしです。
きちんとした知識や技術が有ることが前提ですが、伝統医学においては心というものをとても大事にしていると思います。
例えばギリシャ医学のヒポクラテスの誓い(*)には、
(* 現代では医療倫理として西洋医学を学ぶ者も学びます)
医神アポロン、アスクレピオス、ヒュギエイア、パナケイア、およびすべての男神、女神たちのご照覧をあおぎ、つぎの誓いと師弟誓約書の履行を、私は自分の能力と判断の及ぶかぎり全うすることを誓います。
--------一部省略--------
養生、治療を施すにあたっては、能力と判断の及ぶかぎり患者の利益になることを考え、危害を加えたり不正を行う目的で治療することはいたしません。
また求められても致死薬を与えることはせず、そういう助言も致しません。同様に婦人に対し堕胎用の薬を与えることもいたしません。私の生活と術とともに清浄かつ敬虔に守りとおします。
結石患者に対しては、決して切開手術は行わず、それを専門の業とする人に任せます。
また、どの家に入っていくにせよ、すべては患者の利益になることを考え、どんな意図的不正も苦痛も加えません。とくに、男と女、自由人と奴隷のいかんをとわず、彼らの肉体に対して情欲をみたすことはいたしません。
治療の時、または治療しないときも、人々の生活に関して見聞きすることで、およそ口外すべきでないものは、それを秘密事項と考え、口を閉ざすことにいたします。
以上の誓いを私が全うしこれを犯すことがないならば、すべての人々から永く名声を博し、生活と術のうえでの実りが得られますように。しかし誓いから道を踏みはずし偽誓などすることがあれば、逆の報いを受けますように。
(『ヒポクラテス全集』(大槻真一郎著 エンタプライズ社)
とあり、
同じような医療倫理に関することはインドのアユールベーダの古典の一つ『ススルタ大医典』(伊藤弥恵治、鈴木正夫訳、日本医史学会)にも「開業に必要な医師の資格」という一つの章として書かれています。
『黄帝内経』には医療倫理に関して独立した章はありませんが、例えば『黄帝内経』の霊枢の最初の九鍼十二原篇の冒頭部分に「余子万民」という部分があり、私は万民を慈しむと訳されます。
万民を慈しんでいる伝説の黄帝が、なんとか万民の病を鍼で治したいというところから話は始まるのですが、「子」で慈しむというのが面白いと思います。
わが子のように慈しむということなのでしょう。
我々鍼灸師も患者さんをわが子のように思って治療しなければと思います。
私は、どんな治療も患者さんとの共同作業なのだと思います。
極端な話、手術も切るのは外科の先生ですが切ったその傷口がふさがるのは患者さんの治癒力です。
なので、生命の力に対する畏怖というか祈りというかそういった心の部分も治療家にとっては必要なのではないだろうかと私は思います。
以上簡単ですが鍼灸治療におけるツボについてお話しました。
以上で、かんたん中医学講座を終わります。長期間、かんたん中医学講座をお読みいただきありがとうございました。
当講座をきっかけとして、皆様が中医学、東洋医学に興味を持っていただけたら大変嬉しく思います。また鍼灸治療にご興味のある方は、是非太玄堂鍼灸院にお越しください。ご来院お待ちしております。